名門・啓明館高校に特待生としてスカウトされた元中学野球のエース投手、海藤蓮。だが、野球部の先輩によるパワハラで、一年生の部員同士の殴り合いを強要される。殴り合いには勝ったものの、その時の動画が流出し野球部は廃部。特待生の立場と球児としての未来を奪われた海藤に手をさしのべたのは、水球部の監督、鬼塚だった。水球で実績を残せば、特待生への復帰を掛け合ってくれるという約束で、海藤の水球への挑戦が始まる。
水球という、大多数の人が名前は知っていても、具体的にはどういう競技なのかあまり知らないであろうスポーツ。
この漫画原作では、ルールの解説や基本動作、試合の様子など、水球というスポーツについて丁寧に描いていて、まったくの門外漢でも、読むだけで水球を理解できるようになっている。
私は以前、NETFLIXの「ファイナルドラフト」というアスリートが筋力を競う番組を見たことがある。どれだけ自重トレーニングを続けられるか競う中で、一人の水球選手がずば抜けて高いアベレージを誇っていた。肉体を直接ぶつけ合う対決の段階で、元々の体格差でその水球選手は敗退してしまった。だが、私の心には、「他のどの競技よりハードに肉体を鍛え上げるスポーツ」として水球はしっかりと刻まれた。
なので、この作品の水球の激しさ、凄さの描写は、単にそれをテーマにした作品だからという以上にリアリティを持って受け止めることができた。
ただ、一言いうなら、水球の面白さ、楽しさの点では、現時点では描写は不足しているかなという感はある。
「最後の一本を引いても、まだ大幅なマイナス。トントンには程遠いよ」
あるキャラクターが放ったこの台詞の通り、少なくとも5話までの段階では、海藤にとって今の状況は大幅なマイナスで、水球は「罰ゲーム」なのだ。あくまで特待生としての推薦が欲しいから、野球の代わりに仕方なくやっているだけ。その競技で大活躍して特待生の推薦が取れたとしても、最初に受けた大きなマイナスがトントンになるくらいのもので、大きなプラスではない。
もっと読者の気分が「上がる」ためには、物語に大きなプラスがあるともっと良かっただろう。
たとえば、自分が本当にやりたかったのはこのスポーツだと実感したり、殺伐とした野球部とは違ってこのチームで勝ちたい!と思うような気の合う仲間が水球部でできたりとか。
もちろん、話としてはまだ始まったばかりだ。相手の強豪校、海王大付属の中等部メンバーには勝てているし、この後の展開では本番であろう海王大付属との対決が控えている。そこで主人公のモチベーションも明らかになって作品の方向性もはっきりしていくだろうと期待が持てる。
水球を題材にした漫画を求めていた人、どん底から立ち上がるアスリートが好きな人におすすめの一作。