ラベル実験に出てくる葵という女の子。この作品のタイトルが葵の輪郭ということで、もしやと思い読ませて頂きました。ラベル実験のシーンとの接続がすごく面白かったです。特に桜並木の接続の仕方が好きでした。短編として綺麗に完結してるのは重々承知しておりますが、個人的には長編にして届出の伏線回収も見たいと思いました。
学生らしい日常の中で、不意に見える陰影を描こうとする挑戦作です。裏と表——そんな派手さはありません。でも、読んでいると「あれ、何かいま違和感が?」というシーンがちらりと顔をのぞかせたりします。そしてやがて訪れるひとつの区切りの中で、彼女が見せる顔は……あとはご自身の目で結末を見届けてください。
ずっと一緒にいた幼馴染も、親しい友人も、相手のすべてを知っているわけではない。複数の視点から描かれることで、葵という少女の姿が少しずつ違った輪郭を帯びていくのが印象的です。誰かの優しさも、別の誰かには違って見える。そんな人間関係のすれ違いや、近しい相手だからこそ気づけない一面が、青春の物語に奥行きを与えています。「知っているつもり」の相手を、もう一度見つめ直したくなる作品です。