第11話 その他大勢だった男



服を、溶かす、という。


前代未聞の、蛮行の、あと。


場は、妙な、空気に、なっていた。



リーダー格は、私を「変態」と、決めつけて。


露骨に、距離を、取り。


少年は、私を、遠巻きに、見て。


そして、X、は。


……相変わらず、何を、考えているのか、読めなかった。



(でも、いい。眼福は、得た。私は、満足だわ)



◇



……もっとも。


その、私の、満足を、よそに。


盤面は、静かに、動き出していた。



私は、気づいて、いなかった。


いや、正確には「感じては、いた」。


X、の、感情が。


……ほんの、わずかに、動いた、瞬間を。



それは、殺意では、なかった。


もっと、冷たい。


……「決定」の、揺れ。


何かを、決めた。


そういう、揺れ。



(……何を、決めたの?)



私には、わからなかった。


感情の、揺れは、読めても。


その、中身までは、読めない。


ただ、X、が、何か、行動を、起こそうと、している。


それだけは、わかった。



◇



その、夜。



天井の、光が、落ちて。


部屋が、闇に、沈んだ、頃。



私は、眠らずに、いた。


(拘束は、解かれたけれど。


この、闇の、中で。


のうのうと、眠れる、ほど。


私は、豪胆じゃ、ない。


……打たれ弱いし、臆病だし)



だから、私は。


その、一部始終を。


――今度は、この、目で、見て、しまった。



◇



闇の、中で。


一つの、影が、音も、なく、動いた。



X、だ。



その、動きは。


これまで、見た、どの、能力者とも、違って、いた。


足音が、ない。


気配が、ない。


まるで、闇そのものが、移動している、みたいに。


……すう、と、リーダー格の、方へ、近づいて、いく。



眠って、いる、リーダー格。


歴戦の、冒険者。


剣も、魔法も、使う。屈強な、男。


……その、彼が。


まるで、無防備な、赤子のように。


X、の、接近に、気づいて、いない。



(……危ない)



私は、息を、呑んだ。


声を、上げようか、迷った。


でも、上げれば。


X、に「私が、見ている」ことが、ばれる。


……そうしたら、次は、私が、狙われる。


打たれ弱い、私は。


一瞬で、竦んで、動けなく、なった。



◇



X、が、リーダー格の、傍らに、立った。



そして。


――ほんの、一瞬。



何が、起きたのか。


私には、見え、なかった。


闇の、せいじゃ、ない。


早すぎて、見え、なかった。


ただ、X、の、腕が、すっと、動いて。


リーダー格の、首の、あたりに、触れた、ように、見えた。


それ、だけ。



次の、瞬間。



リーダー格の、身体が、びくり、と、一度、跳ねて。


それから……動かなく、なった。



声も、なかった。呻きも、なかった。


あれほど、屈強な、冒険者が。


剣を、抜く、暇も。


魔法を、唱える、暇も、なく。


ただ、一瞬で、事切れた。



◇



(……なに、今の)



私は、慄然と、した。



能力じゃ、ない。


X、は、能力を、使わなかった。


ただ、一瞬の、動きで、リーダー格を、仕留めた。


……技だ。


恐ろしく、洗練された、殺しの、技。



前に、ドワーフを、殴り殺した、ときも、そうだった。


X、は、能力に、頼らない。


その、身体、そのものが、凶器。


……この、男は、いったい、何者?



――と、そのとき。



◇



死んだ、はずの。


リーダー格の、身体が。


……ぼう、と、淡く、光った。



(……え?)



光は、リーダー格の、全身を、包んで。


そして。


――信じられない、ことに。


一度、止まった、はずの、その、胸が。


再び、上下し、始めた。



リーダー格が、かっ、と、目を、見開く。



「……っ、はあ……!」



息を、吹き返した。



(蘇った……!?)



私は、目を、疑った。


死んだ、はずの、リーダー格が、生き返って、いる。


……そう、か。


これが、リーダー格の、隠して、いた、能力。


「蘇り」。


一度、死んでも、蘇る。


だから、彼は、あんなに、堂々と、前に、出られた、のか。



◇



だが。


X、は、驚か、なかった。



まるで、それを、知って、いた、かのように。


蘇った、リーダー格を、静かに、見下ろして。


……もう一度、腕を、動かした。



「――!」



リーダー格が、何か、言おうと、した。


でも、遅かった。


二度目の、一撃が、正確に、急所を、貫いて。


今度こそ、リーダー格は。


光を、放つことも、なく。


……完全に、事切れた。



静寂。



X、は、動かなくなった、リーダー格を。


しばらく、見下ろして、いた。


それから、ぽつり、と、呟いた。



「……一度、殺しても、蘇る。厄介な、能力だ。……だが。二度、殺せば、同じこと」



◇



(……二度、殺した)



私は、闇の、中で、震えて、いた。


X、は、リーダー格の、蘇りを、知って、いた。


だから、迷わず、二度、殺した。


……いつから、知って、いたのか、わからない。


でも、この、男は。


相手の、能力を、見抜く、目を、持って、いる。



そして、もう一つ。


私は、気づいて、しまった。



X、は、リーダー格を、殺す、とき「能力」を、使わなかった。


蘇りに、対しても。


ただ、もう一度「技」で、殺した。


……つまり、X、の、力は、コピー、できない。


(もし、誰かが、能力を、盗む、力を、持って、いたと、しても。


X、の、技は、能力じゃ、ないから、盗め、ない)



◇



……その、とき。



私は、ふと、気づいた。



闇の、中で、私、以外にも。


もう一つ、息を、殺して。


この、一部始終を、見て、いた、気配が、あった、ことに。



――協力者。



フードの、彼女も、眠らずに。


じっと、リーダー格の、死を。


いや、正確には。


リーダー格が「蘇る、瞬間」を。


……見て、いた。



(……協力者も、起きていたの?)



私は、その、意味を。


このときは、まだ、深く、考え、なかった。


ただ「彼女も、臆病なのね」と。


それくらいに、思って、やり過ごした。



(――でも。それは、とんでもない、見落とし、だった)



◇



翌朝。



天井の、光が、戻ると。


リーダー格の、亡骸が、白い、床に、転がって、いた。



少年が、悲鳴を、上げた。


私は、眠って、いた、ふりを、して「まあ、大変」と、白々しく、呟いた。


(実際は、全部、見て、いたけれど。それを、言う、必要は、ない)



そして、X、は、素知らぬ顔で「……また、誰かが、やったのか」と、呟いた。


……よく、言う。あなたが、やったのに。


でも、私も、それを、指摘、しなかった。


(だって、指摘したら「見ていた」ことに、なる。私は、まだ、死にたく、ない)



◇



残り、四人。



リーダー格が、消えて。


白い、部屋に、残ったのは。


私。協力者。X。そして、気弱な、少年。



……ここまで、来た。


十三人が、四人。


私は、生き残って、いる。


(協力者の、おかげ、で。……いえ、私の、実力で)



でも、空気は。


これまでと、明らかに、違って、いた。


X、が、もう、隠れる、のを、やめて、いた。


リーダー格を。


白昼堂々、とは、言わないが。


もう「自分が、やった」ことを、隠そうとも、しない。


その、佇まいには。


……絶対的な、自信が、みなぎって、いた。



◇



(……これは、まずい)



私は、ひやり、と、した。



X、は、もう、実質「勝った」つもりで、いる。


残る、脅威は、コピー能力を、持つ、誰か。


それが、私か、協力者か、少年か。


……そいつを、始末すれば、X、の、勝ち。


そう、確信して、いる。



だから、これから、X、は。


残った、三人を、一人ずつ、見極めて、潰しに、来る。



……こわい。本当に、こわい。


私は、打たれ弱い。


あんな、化け物と、正面から、やり合ったら。


心が、一瞬で、折れて、しまう。



でも、私は、まだ、折れて、いない。


なぜなら。


……私の、隣には、いつも、あの、協力者が、いた、から。


(そして、私は、やっぱり、その、意味を、深くは、考えて、いなかった)



◇



X、が、ゆっくりと、こちらを、見た。



その、視線は、私を、通り過ぎて。


……協力者と、少年の、方へ、注がれた。



(……そう。X、の、目には。


私は、もう「ただの、変態」。脅威じゃ、ない。


警戒すべきは、協力者か、少年。そう、見えて、いる)



私は、それを、感じ取って。


……ほっと、した。


(よかった。狙われて、いるのは、私じゃ、ない)



――でも、同時に。


心の、どこかで、かすかな、引っかかりも、覚えて、いた。



X、が、見誤って、いる。


一番、警戒すべき、相手を。


……見誤って、いる。


その、ことが、これから、どう、転ぶのか。


このときの、私には、まだ、見えて、いなかった。



(第11話 了)



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 【 湊ミライの ゲーム攻略メモ 】

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・私の能力:感情の揺れがわかる。中身は不明。攻撃不可。

・私の役割:……なんか地味。よく読んでない。

〔今回〕

・X始動。リーダー格を"技"で仕留める(能力でない=コピー不可)。

・リーダー格の隠し能力=「1回蘇り」。だからXは二度殺した。

・その蘇りの瞬間を、協力者も見ていた……(意味は保留)。

・Xはもう隠れない。実質"勝った"つもり。次はコピー能力者

 (私・協力者・少年の誰か)を見極めて潰す気。

・Xの敵認定:私は「ただの変態」で対象外。協力者か少年を警戒。

・残り4人(私・協力者・X・少年)。

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