第4話 それぞれの家
放課後。
「都留ー」
「うるさい」
都留が言った。
「まだ何も言ってないだろ!」
「予想できる」
「ひどいな」
霧雪は本を読んでいた。
「霧雪」
「なに?」
「週末暇?」
「京都帰る」
「本家?」
「本家」
「何しに?」
「お祖父様に呼ばれた」
「さらっと言うな」
「霧雪」
香澄が教室へ入ってきた。
「お祖父様から連絡来た?」
「きた」
「私も」
「なあ」
「なに?」
香澄が聞く。
「どうしてお前ら普通に『お祖父様』って言うんだ?」
「変かな?」
「変じゃないけど」
「現実であんまり聞かない」
「確かに」
菜々が頷く。
「そう?」
「そう」
颯太はため息をついた。
「東雲」
「なに?」
「お前、自分の家がどれくらい有名か知ってるか?」
「普通じゃない?」
教室が静かになる。
「霧雪」
「うん」
「東雲宮家は普通じゃないの」
「そうなの?」
「そうなの!」
香澄が思わず大きな声を出した。
「京都で東雲宮家知らない人ほとんどいないよ!」
「そんなに?」
「そんなにです」
百瀬が言った。
「修学旅行の事前学習で名前見たことあるし」
「私も」
「知らなかった」
「本人が知らないのか」
「昔からこうだから」
「香澄の家も同じくらい有名なの?」
「同じくらい」
「うちも有名だよ」
「へえ」
「へえじゃない!」
教室に笑い声が響く。その時。教室の扉が開いた。
「失礼します」
琴音だった。
「会長」
「なんだ」
「いいところだった」
「嫌な予感しかしない」
「たぶん当たっています」
「なんの話してたんだ?」
「家」
颯太が即答した。
都留の表情が少しだけ曇る。
「帰る」
「待て待て待て」
颯太が慌てて止めた。
「まだ何も話してない!」
「どうせ面倒な話だ」
「正解だけど!」
また笑いが起きる。
颯太は都留を見る。
「会長」
「なんだ」
「青野グループの後継者ってどんな気分だ?」
「知らん」
「知らんってなんだよ」
「後継者だからだろ」
「だからその感覚が分からない」
琴音がため息をついた。
「会長」
「なんだ」
「自覚してください」
「必要か?」
「必要です」
百瀬が笑う。
「琴音先輩即答だった」
「会長はもっと自覚した方がいいと思います」
「みんなそう言う」
「だって青野グループですよ?」
「そうだな」
「そうだなじゃなくて!」
颯太が机を叩いた。
「テレビで見る!」
「見るな」
「駅前にビルがある!」
「あるな」
「ニュースにも出る!」
「たまに出るな」
「なんで他人事なんだよ!」
霧雪が都留を見る。
「そんなにすごいの?」
「父さんたちはすごいと思う」
「会長もすごいですよ」
「そうか?」
「そうです」
「そうかな」
「そうです」
「東雲先輩もです」
「なんで?」
「東雲宮家の嫡男だからです」
「知らなかった」
「知っててください」
琴音が言った。
すると、勢いよく扉が開いた。
「お兄ちゃーん!」
「また来たのか」
「来た!」
陽毬は都留の隣へ座る。
「近い」
「いいじゃん」
「よくない」
「いいの」
「よくない」
「いいの」
「毎回やってるね」
「毎回だ」
「都留くんは陽毬ちゃんだけ平気だもんね」
菜々が言った。
「昔からだからな」
「琴音先輩もですよね?」
琴音は微笑んだ。
「はい」
「会長とは小さい頃から一緒なので」
「幼馴染?」
「違います」
「違うの?」
「家同士の付き合いです」
「青野家と琴音先輩の家?」
「そうです」
「名家多くない?」
「東雲宮家」
「溜池宮家」
「青野グループ」
「なんなんだこのクラス」
「「知らない」」
都留と霧雪。
「また同じ反応!」
香澄が笑う。
「でも」
「なに?」
「霧雪も都留くんも家のこと全然気にしてないよね」
「学校だし」
「関係ない」
「また同じこと言った」
百瀬が笑う。
琴音も微笑む。
「似ていますね」
「嫌だな」
「なんで?」
「そこも似てる」
「帰るか」
都留が立ち上がる。
「帰ろう」
霧雪も本を閉じた。
「じゃあまた明日」
「またね」
「お疲れ様です」
「またな」
今日もただの中学生として笑い合っていた。
つづく。
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