第六w2W  「ドワーフ、さらにお酒」


 むっしゃーは、少し照れながらも、話題を変える。

「ところで、この国って、酒が武器レベルを決めるんですよね? 蒸留酒とか、やってます?」


 ドワルフ王が、鼻で笑った。

「グヂエアゴ、グドゥンヌガゲ、エアゴンァカケガァ、ガハハ」

(酒なら、火で温めて作ってる。持ってこい、がはは)


 ドワーフたちが、樽から樽へとパイプを切り替え、巨大な蒸留器のような装置を動かし始める。しかし、その装置は、どこか効率が悪そうで、蒸気が無駄に漏れている。


 むっしゃーは、技術屋の血が騒ぐのを感じた。

「……ちょっと、蒸留器、見てもいいですか?」


《技術介入ターン》

《酒文化に技術革命》

《ドワーフの蒸留器、絶対カオス構造》

《☆彡》


 蒸留器は、鉄と銅のパイプが絡み合い、樽がところどころに挟まっている。

火の調整は、ドワーフがハンマーで炉を殴ることで行われているらしい。


「ガァフゴ、ドガンァゲ、ギュドゥン、ガハハ」

(火を強くしろ、鉄が眠ってるぞ、がはは)


「いや、火力調整をハンマーでやるのは、ちょっと……」

 むっしゃーは、配信カメラを片手に、もう片方の手で簡易スケッチを始める。


 熱効率、冷却効率、蒸気圧、凝縮ポイント――

頭の中で、技術的な改善案が次々と浮かぶ。


「まず、蒸留器の形をこうして……冷却コイルを長くして、温度差を利用して……」

 むっしゃーは、ドワーフたちに向かって、簡単な図を見せる。

「これが『蒸留酒の極意』です。温度管理と段階的な蒸留で、アルコール度数を精密にコントロールできます」


 場=子量が、興味津々で覗き込む。

「火と水の気、自在になだめつつ、交ざりあへるもとを鮮やかに選び分く。……あやしくもめでたき業にこそあめれ」

(温度場を細かく制御して成分の場を分けるなんて、本当に非線形の妙だね♪)


《蒸留酒講座きた》

《技術屋むっしゃーの本領》

《ドワーフ語より専門用語が難しい》

《☆彡》


 ドワーフたちは、むっしゃーの図を見て、ガァガジェゴ語でざわめく。

「グヂエァガエダゴェ、ゲイジキッゴノエァガゲ?」

(酒度数が、武器レベルの細かい段階になるのか?)


「ギャゴンゲット、エアゴンァカケ、グヂエァガグドゥンヌガゲ、ガハハ」

(なら、酒を持ってこい。その腕輪の技術を試すぞ、がはは)


 むっしゃーは、配信カメラに向かって説明を続ける。

「みなさん、今日は『ドワーフ国で蒸留酒の極意』をやります。かなりマニアックで詳細になるので、コメント欄で寝ないでください」


《寝ないw》

《酒と技術の回、最高》

《蒸留酒の極意(異世界版)メモる》

《☆彡☆彡》


 むっしゃーは、ドワーフたちと協力して、新しい蒸留器を組み上げていく。

銅管を曲げ、冷却水路を作り、温度計代わりに場=子量の計測器を取り付ける。


「ここに熱さ冷しさの気はひを伺ふ具を据ゑて、移ろひのさまを見とどむべし」

(ここに温度場を観測する装置を置いて、変化を読むんだ)


 場=子量は、雅語で説明しながらも、時折ドワーフ語を混ぜ始める。


「グヂエァガエダゴェヲ、エァグドゥンヌニテ……あ、いや、酒度数を火の強さで……」

(酒度数を火の強さで……)


 むっしゃーは、その混ざり具合に少し笑う。

「場=子量さん、もうドワーフ語、うつってきてますよ」


《雅語+ドワーフ語のハイブリッド》

《酒蔵に長くいると喉が濁る》

《場=子量、順応性高い》

《☆彡》


 新しい蒸留器が完成し、試験運転が始まる。

まずは、葡萄をもとにした発酵酒を投入する。


「エアゴンァカケガァ! グヂエァグドゥンヌガゲ! ガハハ!」

(酒を持ってこい! 火を強くするぞ! がはは!)


 炉に火が入り、蒸気が立ち上る。

冷却コイルを通った蒸気が、透明な液体となって滴り落ちる。


「これが、蒸留酒の第一段階。アルコール度数は……」

 むっしゃーは、場=子量の計測器を覗き込む。


 場=子量が、雅語で読み上げる。

「度、三十にて」

(度数は30だね♪)


《度数表示きた》

《武器レベル30》

《ドワーフ的にはまだ木の棒》

《☆彡》


 ドワーフたちは、その酒を一口飲み、目を見開いた。

「グヂエァガエダゴェ……ゲイジキッゴノエァガガァガァゲ! ガハハ!!」

(酒度数、……武器レベルが細かく分かれてる! がはは!!)


ドガギィィィンン!

 ドワルフ王は、ハンマーを振り上げ、鉄塊を一撃で叩き割る。

「グヂゲイジキッゴガァ、エァエァガエダゴェゲ!」

(この武器は、酒度数に対応している!)


《酒→武器レベルのリンクが精密化》

《技術革命完了》

《ドワーフのテンションが酒でさらに上がる! は、破壊開始!》

《☆彡》


 しかし、蒸留酒の真価は、熟成にある。

むっしゃーは、樽を指さした。


「この蒸留酒を樽に入れて、何年も寝かせると、味がまろやかになって、香りも複雑になります。でも、時間がかかるんですよね~」


 場=子量が、にやりと笑った。

「その時にこそ、我がはからひがたき『ひかりの術』を尽くすべき折に侍り」

(そこで僕の非線形量子場魔流術の出番だね♪)


《時間干渉きた》

《熟成ショートカット》

《ご都合スキル発動》

《☆彡》


 場=子量は、樽の周囲に、淡い光の陣を描き始める。

古代祈祷文のような詠唱が紡がれる。


「かしこくも時のめぐりをたわめ給ひ、神酒のこなれのみを深く進め、余の気はひことわりを乱したまふことなかれと 慎み敬ひてまおさく……」

(時間の場を曲げて、酒の熟成だけを進めて、他は乱さないように……)


 しかし、酒の香りが強くなるにつれ、場=子量の言葉にドワーフ語が混ざり始める。

「……グヂトキノバヲ……エァエアガエダゴェヲ……あー? 酒度数をうまく……ガハハ……」

(時間の場を……酒度数をうまく……がはは……)


 むっしゃーは、少し心配そうに見守る。

「酔ってきてません?」


《詠唱にガハハ混ざってるw》

《酒の場に飲まれてる》

《非線形量子場魔流術、アルコールに弱い》

《☆彡》


 場=子量の周囲に、時間の波紋のようなものが広がる。

樽の木目が、一瞬で古び、香りが深くなる。


「一樽目、熟成一年にて」

(一つ目の樽は、熟成1年)


「二樽目、十年にて」

(二つ目は10年)


「三樽目、百年……グハハ」

(三つ目は100年……ぐはは)


 場=子量の雅語は、徐々に崩れ、ドワーフ語が優勢になっていく。


「グヂエァガエダゴェ……千年物ガァ! ガハハ!!」

(酒度数……千年物だ! がはは!!)


 樽の表面は、もはや古代遺跡のような風合いになっていた。


《1年物~1000年物まで揃った。……ほしい……》

《時間干渉、仕事が早い》

《場=子量、完全に酔ってる》

《☆彡》


 ドワルフ王は、樽を順番に開けていく。

1年物、10年物、100年物、1000年物――それぞれの香りが、地下都市に広がる。


「エアゴンァカケガァ! グヂエァガエダゴェヲ、ゲイジキッゴニテ、グハハ!!」

(酒を持ってこい! 酒度数を武器レベルで試すぞ、ぐはは!!)


 ドワーフたちは、列を作り、順番に酒を飲み始める。

 1年物は、爽やかで軽い。

 10年物は、まろやかで深みがある。

 100年物は、複雑な香りと重厚な味わい。

 1000年物は――


「グヂ……エァ……ガエダゴェ……ギャゴン……」

(酒……度数……なら……)


 飲んだ瞬間、ドワーフたちの目がぐるぐると回り、ハンマーを抱えたまま、その場に倒れ込んだ。


《飲み比べ大会開幕》

《1年物→爽やか》

《10年物→まろやか》

《100年物→重厚》

《1000年物→人族類の限界》

《☆彡~☆彡~~》


 場=子量も、ふらふらとしながら、雅語とドワーフ語を混ぜて喋る。

「やや……この千年物、まこと……グヂエァガエダゴェガァ……ガハハ……」

(この千年物、本当に……酒度数が……がはは……)


 そして、最後には完全にドワーフ語になった。

「エアゴンァカケガァ! グヂバ=シリョウゴ、エァエァガエダゴェニテ、グハハ!!」

(酒をもっと持ってこい! 場=子量は酒度数の中にいる! ぐはは!!)


 場=子量は、ジョッキを抱えたまま、樽の影に倒れ込んだ。


《雅語消滅のお知らせ。雅、終了しました》

《完全ドワーフ語化》

《酒場に飲まれた物理学者》

《☆彡》


 ドワーフたちは、一人、また一人と倒れていく。

1年物でほろ酔い、10年物で上機嫌、100年物で足元がおぼつかなくなり、1000年物で完全に沈黙。


 残ったのは――なぜか、むっしゃーただ一人だった。


「え、みんな倒れた……?」

 むっしゃーは、自分のジョッキを見つめる。

彼女は、技術屋気質ゆえに、酒の味を分析しながら、少しずつしか飲んでいなかったのだ。


《理系飲みの勝利》

《テイスティング勢は強い》

《むっしゃーだけ立ってる》

《ドワーフ国の酒耐性を超えた女》

《☆彡☆彡》


 そのとき――

 地下都市全体が、ぐらりと揺れた。



――続く。


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