雨の日のバス停。
好きな人の隣に座っているのに、
手を伸ばすことさえできない。
何気ない言葉ひとつに胸が跳ねて、
少し格好をつけてみて、
結局また一人で空回りする。
――ああ、青春だなあ。
そんな甘酸っぱい気持ちで、私はこの物語を読み始めました。
陽菜と潤。
幼い頃から続いてきた二人の時間は、とても瑞々しくて、微笑ましい。
雨宿り。
昔の思い出。
渡したハンカチ。
言えない気持ち。
何でもないようなひとつひとつの出来事が、雨粒のように静かに重なっていきます。
そして、この作品にはもう一人。
二人を見つめ続ける「僕」がいる。
けれど――
ここから先について、私はあえて黙ろうと思います。
ぜひ、そのまま読んでほしいから。
雨音を聞きながら。
陽菜と潤の会話を楽しみながら。
時折現れる「僕」の言葉を、そっと胸の片隅に置きながら。
そうして最後までたどり着いたとき、
「ああ、だから――」
と、きっともう一度、この雨の中を振り返りたくなると思うのです。
一度通ったはずの道なのに、
そこには、さっきまで気づかなかった景色がある。
それが、この短い物語のとても素敵なところでした。
雨は、ときに鬱陶しくて。
空は暗くて。
早く晴れてほしいと願ってしまうもの。
けれどこの物語を読んだあとなら、
次に雨が降った日、
いつもより少しだけその音に耳を澄ませたくなるかもしれません。
雨の日から始まる、小さくて優しい物語。
どうか最後の一滴まで、見届けてみてください。