雨の中で揺れる瑞々しい青春、そして『僕と君と彼』の三角模様。淡い水色のヴェールをまとったような世界を、柔らかく、それでいて確かな筆致が描き出します。
登場人物と同世代の読者なら共感を覚え、今は大人になった読者なら「あの頃」を思い出す。そんな甘酸っぱい青春の一ページです。
……だけど、ちょっと待って。
何しろ、作者様はミステリーも手がける方なのです。雨が上がるそのとき、小さな秘密が明らかになります。読み返せば、「なるほど」と唸らされるフェアな手がかり。
降り注ぐ雨粒まで、一粒で二度おいしい。そんな完成度の高い掌編です。