第27話荷物の多い人間はそれだけ稼ぐでしょ

 さて、どうしたものか。

 純恋に連絡したらあっという間に責任者が土下座しにくるだろう。

 しかし、純恋に連絡しないと言うのも友情を軽く見ている気がする。


 しばし、庭で煙草を吸い、考え込む。


「桜ちゃんって煙草吸うんだ……」


 意外そうに言うイノ。


「なんなら酒も飲むけど」


「大麻は?」


「してないよ。なんか握手会で怪しい粉をつかまされたことはあるけど」


「それってやばい奴じゃない?」


「小麦粉じゃないかしら」


 適当なことを言う。

 実際に握手会で大麻を摑まされたケースがあるというから私もその粉は捨てた。


「寒くないの?」


 イノが言う。

 外はすっかり雪景色。

 東京育ちのイノは歩くのも億劫だろう。


「都会用の靴でコケなかった?」


「これでも全国ツアー済です」


「そうだったわね。あんたは私と違って大物だったわ」


 呆れまじりに言う。


「仙台に行った時に雪が降っててね。そこで現地の人に滑りにくい靴があるって習ったんだ」


「けど、仙台は日本海側じゃないからそんなに降らないでしょ」


「そうね、日本海側が酷いのね」


「そうよ。秋田、新潟。雪積もるってイメージあるでしょ」


 イノはこくこくと頷く。そして繰り返し言う。


「寒くないの?」


「私は平気よ、暖房効いてる部屋戻れば?」


「監視してないといつ突き出されるかわかったもんじゃないわ」


 なるほど、厄介者の自覚はあるらしい。


「私の歌、か……」


 なるほど、私には代名詞的な歌はない。

 アイドル時代に歌った歌は陳腐とは言わないが私の性質とは異なっている。

 歌ったのは華やかな恋の歌。

 大人の男性にメロメロ系統の。

 自分にはない特性を付与された品物。

 なら、それを否定してまで私が歌にして伝えたいものってなんだろう。


 何もない。

 強いて言えば生きるの楽しい、とか?


 その感想を正直に言うと、イノは呆れたように言った。


「何も持たない人間って楽なものね」


「荷物の多い人間はそれだけ稼ぐでしょ」


 ぼやきまじりに言う。

 コミュ強と社不の交流だった。


つづく

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