第44話 偶然がそんなに続くか
俺は、柚月に何も声を掛けないでいると彼女は泣いたまま帰って行った。優愛さんが部屋から出て来て
「あの、石井さんと何か?」
「気にしないで!」
俺の声がきつかったのか、驚いて部屋に入ってしまった。後で謝っておくか。
それから冬休みが終わるまで柚月とは会わず、連絡もしなかった。こんな気分で早瀬さんと会う気にもならず、会うのは学校始まってからにして貰った。日にちははっきり言っていない。
一月八日の朝、俺はいつもの様に家を出ると玄関で柚月が待っていた。そして
「恭介、本当にごめんなさい。もう良い訳はしないから許して下さい」
「…分かった。でも俺の気持ちが整理出来ていない。一緒に行くのは構わないけど、朝だけだぞ」
「うん」
§石井柚月
あれ以来、恭介と会う事が出来なかった。もし強引に会って、またあの話になったらもっと拗れてしまう。だから我慢した。
そして今日の朝、恭介を待って言い訳せずに素直に謝った。そうしたら朝一緒に登校する事を許してくれた。
でも一緒に歩いているのに心が全く傍に居る感じがしない。当たり前だよね。逆の立場だったら直ぐに気持ちが元に戻る事無いもの。
学校の最寄り駅で翔太と合流すると
「恭介、石井さん、あけおめ」
「あけおめ、翔太」
「明けましておもでとうございます。小暮君」
§小暮翔太
なんだこの空気は?恭介と石井さんがまるで他人同士に感じる位二人の間の空気が冷えている。
翔太とも話が弾まない中、学校に着いて昇降口で履き替えて教室に入る前に翔太が
「恭介、後でな」
「おう」
柚月との事、説明しろという事か。
柚月と一緒に教室に入ると柚月は自分の席に行き、俺も自分の席に座った。前に座る女子が挨拶して来たので俺も返すと
「岸上君、石井さんと何か有ったの?」
「いや別に何もないよ」
おかしいなぁ。二人が入って来た時、二学期迄の笑顔が全くなかった。まるで他人同士の様だった。
予鈴が鳴って担任の君津川綾子先生が入って来た。
「皆さん、おはようございます。体育館で始業式が有りますので廊下に出て整列して下さい」
俺はチラッと柚月を見た。周りの女子と話している表情は落ち込んでいる様子はない。良かった。
体育館での始業式も終り教室に戻って来て少しして君津川先生が入って来た。
「皆さん、病気や怪我もなく過ごせた様で良かったです。
今月は模試の他にも本校入学を希望する中学生の推薦者選抜試験があり、通常の授業時間が変わりますので気を付けて下さい。次の連絡事項ですが…」
君津川先生からの連絡事項を聞いて、今日は下校となった。柚月が俺を見ている。どうするか考えていると寄って来た。俺は何も言わずに教室を出て昇降口に向かうと翔太が居た。
「恭介、一緒に帰るか?」
「おう」
俺は履き替えると柚月に
「今日は翔太と一緒に帰るから」
「分かった」
私は仕方ないしに一人で駅に向かった。
§広瀬康太
あれ、石井さんが一人で帰っている。岸上は翔太と一緒だ。それに後姿が寂しそうだ。何か有ったのかな。声を掛けたいけど、この前の事も有るしな。今日は止めておくか。
俺は、駅まで向かいながら三日に有った事を翔太に説明した。
「恭介、俺はその場に居なかったし、話を聞いただけだけど、石井さんの言っている事も分かる。
偶然出会った。知らない人じゃない。そんな時、知らない顔して別々に席を座るとか中々出来るものじゃない。
ただトタヤの件は俺も良く分からない。偶然でも別々にいればいい話だ。一緒というのはちょっとだけ違和感がある」
「俺も後から考えて翔太と同じ考えになった。レストランは良いとしてもトタヤでは別々に行動すればいいはずだ」
「でも恭介、親友だから言うけど結論は急ぐなよ。石井さんとの仲は中途半端じゃないだろうから」
「分かっている」
そして翌日も朝は柚月と一緒に登校した。昨日よりは少しだけ話す事が出来た。柚月も笑顔を見せていた。
でもお昼は別々にした。心の中がスッキリしない内に柚月と一緒に居て、曖昧に流されたくなかったからだ。
§広瀬康太
あれ、石井さんが岸上じゃなくて別の女子達と一緒に食べている。どうなっているんだ。
そして放課後、俺は早瀬さんと一緒に勉強する為、図書室に行ったけど柚月は来なかった理由は分からない。
§石井柚月
恭介が図書室に行った。早瀬さんと一緒に勉強するつもりだ。私は恭介とは一緒に居たいけど早瀬さんの顔なんて見たくない。
今の気持ちや恭介との間を知られたらあの人の事だ。強引に恭介との溝を広げて来る。だから恭介との仲が完全に元に戻るまで放課後、図書室に行くのを止める事にした。
俺は、図書室に行くと早瀬さんは待っていた。直ぐに傍に行くと
「岸上君、来てくれたんだ」
「えっ、三学期になったらまた一緒に勉強しましょうって言っていましたよね」
「勿論。所で石井さんは?」
「柚月は、当分の間来ません」
「そうなの。まあいいわ、始めましょうか。直ぐに模試もあるし頑張らないとね」
「はい」
ふふっ、どんな理由か知らないけど私には最高。岸上君と二人だけで勉強出来て二人だけで駅まで帰る事が出来る。
そんな日が続いた週の土日は会わなかった。そして次の週の模試も終わった。柚月との間も段々わだかまりが消えて朝はいつもの二人の会話に戻って来た。
そろそろお昼も柚月と一緒に食べようと思っていた時、翔太から
「恭介、言い難いんだけど…。昨日石井さんがバスケの練習を見に来た。理由聞いたらどうも広瀬が一人で帰る石井さんを見つけて一人で帰るならちょっとだけでも見て行かないかと言われて寄ったんだって」
「…翔太、教えてくれてありがとう」
どういう事なんだよ。誘われたからって行かなければいいじゃないか。やっぱり広瀬と…。
でも翔太が次の日の昼休み学食で一緒に食べていると
「恭介、石井さんがバスケ見に来たのは、一昨日だけだな。昨日はいなかった。もし来たら教えるよ」
「悪いな」
それから翔太から柚月の事は聞かなくなった。
だからそろそろ柚月にお昼も一緒、勉強も一緒にして帰ろうと言おうと思っていた。明日の朝にでもそう言えばいい。
この日の放課後の勉強が終わった俺と早瀬さんが図書室を出て、昇降口履き替えて校舎を出ようとした時、体育館から柚月が出て来た。
あれって思っていると後ろから広瀬が出て来た。二人共笑顔で楽しそうに話をしている。広瀬とは何も無かったんじゃないのか?
「どうしたの、岸上君」
「あれ」
「広瀬君と石井さんだ。仲良さそうね」
俺はまた分からなくなって来た。これも偶然で済ますのかな?翔太からは何も聞いていないし。明日聞いてみるか。
―――――
皆様の☆☆☆が投稿意欲のエネルギーになります。
感想や、誤字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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