第38話 おみくじは夢か現実か
昨日の夜も早瀬さんから連絡が有ったけど、俺はちょっと疲れ気味で話が終わった後、直ぐに眠ってしまった。話した事をあまり覚えていない。
次の朝は元旦だ。スッキリと晴れてはいないけど花曇り。午前七時に起きて顔を洗ってダイニングに行くと父さんも志保さんも優愛さんも起きていた。皆早い。
俺がテーブルに着くと父さんが
「志保さん、始めようか」
「はい」
志保さんが、父さんの亀が描かれている透明な杯にお酒を注ぐと母さんと俺と優愛さんも透明なリンゴジュースをグラスに注いだ。そして父さんが
「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
「「「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」」」
と言って新年の家族の挨拶をした。
そしてテーブルに載っている三段のお重が開かれて、冷蔵庫から大皿に載ったお刺身や蟹が皿に載せられて出て来た。
志保さんが
「恭介さん、優愛、お雑煮食べるでしょ。幾つ?」
「俺は二つ」
「私は一つ」
お雑煮を食べながらお重の料理、お刺身を食べた。蟹とも格闘。俺達は足の部分。父さんはハサミの部分だ。両方ともとても大きい。
調理挟みで切れ目は入れてあるが、最後の方は柄の長いスプーンで掻き出して食べる。お腹の身の部分も食べた。
流石にお腹が一杯になって志保さんにお茶を淹れて貰うと志保さんが
「恭介さん、初詣は柚月ちゃんと二人で行くの?」
「はい、そのつもりですけど」
「そう、優愛も連れて行ってくれないかしら」
「良いですよ」
優愛さんが
「石井さんに悪いので良いです。でも恭介さんが良ければ明日一緒に行ってくれると…」
「気にする事も無いと思うけど、優愛さんがそう言うなら明日にしようか」
「はい!」
ふふっ、石井さんと一緒になんて行きたくない。恭介さんと二人で行くんだ。
お腹が落着いた所で柚月に連絡を入れた。
『柚月、何時に出れそう?』
『午前十時位が良いい』
『了解。迎えに行くよ』
『うん』
柚月との話が終わると優愛さんに
「優愛さんは明日、何時がいい?」
「恭介さんの都合に合わせます」
「うーん、明日都合なんて無いから、適当な時間に行こうか」
「はい」
午前十時少し前に柚月の家に行った。インターフォンを鳴らすと直ぐにドアが開いて小母さんと柚月が立っていた。
青色を基調とした素敵な着物だ。中学三年まで来ていた着物と違う。
俺は玄関で
「明けましておめでとうございます」
「恭介ちゃん、明けましておめでとう」
「恭介、明けましておめでとう」
「柚月、行こうか」
「うん、ちょっと待って。草履を履くから」
男子と違って着物だと足袋に草履だ。結構大変だな。
草履を履き終わると柚月が
「お母さん、行って来るね」
「行ってらっしゃい。恭介ちゃん、柚月を宜しくね」
「はい」
§柚月のお母さん
今年も明けた。恭介ちゃんと柚月は二人共とても嬉しそうに初詣に出かけたわ。今年も何事もなく、あの二人が幸せでいてくれると嬉しいのだけど。
今年で高校二年生。まだまだ色々な事の有る歳。何も無いで欲しいと思うのは親の思いなのだけど。
地元に神社に向かいながら
「柚月、着物、去年と違うよね」
「うん、高校生になったからって新調してくれたんだ」
「へーっ。凄いな」
「一人っ子の役得」
「なるほど」
柚月は普段でも可愛くて綺麗だけど、今日は着物を着る為かしっかりとお化粧もしているから一段と綺麗だ。前から来る男性達が柚月をチラチラ見るけど彼氏として自慢出来る。
いつもは十分と掛からない神社に十五分以上かけてゆっくりと歩いて来ると参道から通り迄参拝客の列が伸びている。
柚月が
「毎年だね。この列、午前零時から続いているんでしょう。凄いね」
「うん、夜中はボーイスカウトが鳥居をくぐった辺りから篝火を炊いて舞台で囃子が鳴り響いているらしいよ」
「恭介、何で知っているの?」
「父さんと母さんは午前零時派だから」
「そういう事か。私達は無理ね」
「まあ、昨日の夕方も頑張ったからな」
「恭介がいけないんでしょう。私を無理矢理襲うんだもの」
「おい、何処で事実が歪曲されたんだ」
「あら、本当の事じゃない。こんな純真な乙女を」
「柚月、それ以上曲解した事言うならお仕置きするぞ」
「うん、してして」
駄目だ。お正月から柚月の頭の中はお花畑だ。初詣にする会話では無くなっている。
それから更に三十分位並んで鳥居を潜り、更に十五分位してやっと本堂にたどり着いた。いつもとは違う大きな賽銭箱が置かれている。
柚月と一緒にお賽銭…高校生なので百円です…を賽銭箱に入れて二礼二拍してお願い事をして一礼して横にずれた。
勿論お願い事は、今年は柚月と一緒に大過なく静かに過ごせます様にだ。
横にずれると早速おみくじの所へ行った。ここも百円を箱に入れて八角の筒をクルクル回して数字の書いてある棒を一本抜くと六の三と書いてある。
正面の棚の六の三と書いてある引出しからおみくじを一枚取ると横に逸れた。柚月も取った様だ。
開いてみると、えーっ。小吉と書いてある。
願望 思う様に進まない。
恋愛 別れと出会いがある。
学業 繰り返しの基礎固めが大切。
肝心な所だけ見たけど、ショックでしかない。柚月を見ると元気のない顔をしている。
「柚月どうだった」
「見てよ、これ」
俺と同じ小吉で願望、恋愛、学業がほとんど同じだ。
「恭介、あそこに結んで神主にお焚き上げして貰ってこんなの無くすの。直ぐに縛るわよ」
「う、うん」
神社からの帰り道はご機嫌斜めだった柚月だったけど、家に戻ってお母さんに手伝って貰って着物を脱いでお化粧を落とすとお母さんがいる前で
「柚月ちょっと来て」
「えっ、うん」
柚月の部屋に入ると思い切り抱き着かれた。
「恭介。思い切り抱き締めて」
「うん」
少しの間そうしていると今度は口付けを求めて来た。お正月からだけど思い切りディープにした後、お互いが抱き締めながら
「恭介、絶対、絶対に私達は何も変わらないからね」
「当たり前だ」
「じゃあ、もう一度」
強く抱き締め合いながら口付けをするとやっと落ち着いたのか、
「ダイニングに行ってお茶にしようか」
「うん」
ダイニングに行くと小母さんと叔父さんが居た。叔父さんは俺の顔をジッと見た後、新聞に目を戻した。うーん、仕方ない。
小母さんが
「お昼にはまだ早いわね。お茶にしましょうか」
「お願いします」
それからなんで柚月が着物を着た後、直ぐに二階に上がったのか聞かれはしなかったけど、柚月がご機嫌斜めで帰って来た原因を俺に聞かれたのでおみくじの事を言ったら小母さんが
「そうね、当たるも、外れるも神様の思し召し次第ね」
なんていう物だから柚月が
「そんな事無いもん」
と言って頬を膨らましたら何故か、小母さんと叔父さんが可愛いと言って笑っていた。静かな事が一番なんだけど。
―――――
皆様の☆☆☆が投稿意欲のエネルギーになります。
感想や、誤字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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