夏を詠んだ短歌、と聞いて思い浮かべるのは、青空や蝉の声、夕暮れや冷たい水――そんな鮮やかな季節の風景かもしれません。
この作品にも、確かにそうした「夏」があります。
けれど、一首ずつ読んでいくうちに、その景色の奥にあるものへ少しずつ気づかされていきます。
短歌はわずかな言葉しか使えないのに、ここまで景色も感情も広げられるのですね。
それぞれ違う夏の一場面なのに、十首すべてを読むと、ひとつの大きな記憶として胸に残りました。
夏の美しさだけではなく、その中に残っている記憶までそっと掬い上げた作品。
ぜひ十首すべてを、ゆっくり味わって読んでほしいです。