雨の匂いには「ペトリコール」。
魚の形をした醤油入れには「ランチャーム」。
鉛筆と消しゴムをつなぐ金属にも、ちゃんと名前がある。
何にでも名前を見つけて教えてくれる彼女と、それを楽しそうに聞く僕。
最初は微笑ましい豆知識のやり取りなのに、読み進めるほど、その一つ一つの名前が二人の時間そのものになっていきます。
だからこそ、何でも知っている彼女が「二人の関係」や「別れの気持ち」だけは名前にできないところが、とても印象に残りました。
名前を知れば、世界が少し広がる。
そしてその名前には、人との記憶まで宿ることがある。
静かで優しく、読み終えたあと身の回りのものの名前を少し調べてみたくなる短編です。