「余命、六年」
その一言から始まる物語なのに、読み終えたあと心に残ったのは、死への恐怖よりも「人と一緒に生きた時間」の温かさでした。
海へ行く。
引っ越す。
猫を飼う。
季節を一緒に眺める。
特別な奇跡が起こるわけではなく、描かれているのはどこにでもありそうな日常です。
けれど物語が進むにつれて、何気なく交わされていた言葉や表情の一つ一つが、少しずつ違った意味を持ち始める。
そして真実を知ったとき、それまで読んできた六年間を、もう一度最初から思い返したくなりました。
この物語の好きなところは、「余命」という言葉をただ悲しいものとして終わらせなかったこと。
限りがあるから大切なのではなく、大切な人と過ごしたから、その時間には意味があった。
短い物語の中に六年分の季節があって、読み終わったあと、少しだけ今日という一日を大事にしたくなる。
そんな作品でした。