最初は「犬と猫が戦場から逃げて、白い門の謎を追う話なのかな?」くらいの感覚で読み始めたんですが、読み進めるほどに、思っていたよりずっと重くて、でも不思議と優しい物語でした。
まず、アスター・リゼル・ゼノの3匹がいいですね。
特にアスターとリゼルの掛け合いが好きでした(笑)
何かあるたびに慎重になって考え込むアスターと、「まあ、やってみようよ」みたいなノリで突っ込んでいくリゼルの温度差が面白い。
リゼルはかなり無鉄砲なのに、ただのトラブルメーカーではなく、ちゃんとアスターのことを見ている感じがあるのも良かったです。
そして、最初からちょっと謎めいていたゼノ。
戦争の跡地で武器や装飾品を拾っていたり、妙に人間のことを知っていたりして、「この犬、何かあるな」と思わせる描写が少しずつ積み重なっていくのが上手いなと思いました。
白い門についても、単純に「人間を滅ぼす謎の存在」というだけではなく、そこにゼノの過去や後悔、主人との関係が絡んでくることで、物語の見え方が変わっていくのが印象的でした。
特に終盤のゼノの正体が分かるところは、かなり切なかったです。
「ずっと一緒に旅をしてきた仲間だと思っていた存在が、実は……」という展開は、序盤からのゼノの描写を思い返すと、なるほどと思える部分も多くて、ここは良かったですね。
それと、この作品は戦争や人間と使役動物の関係を扱っているので、結構重いテーマなんですが、リゼルの自由奔放さやアスターの心配性のおかげで、ずっと重苦しくならないのも良かったです。
途中の旅パートでは、門の謎がすぐ進むわけではなく、動物たちとの出会いや寄り道が続くので、「もう少し門の謎を進めてほしいな」と感じるところは正直ありました。
特に中盤は、謎が少しずつ提示される一方で、物語の進行自体はゆっくりなので、人によっては少し間延びして感じるかもしれません。
ただ、その寄り道の中で3匹の関係性が深まっていくので、後半まで読むと「この時間も必要だったんだな」と思える作りになっていると思います。
あと、個人的にはリゼルの存在がかなり大きかったです(笑)
シリアスな場面でも平気で変なことをするので、読んでいてちょっとホッとします。
全体としては、派手なバトルをどんどん繰り返すタイプのファンタジーではなく、謎を追いながら、戦争や命、後悔、自由についてじわじわ考えさせる作品でした。
そして何より、最後まで読むとタイトルの「時喰い門」と「残魂」の意味がしっかり物語につながってくるのが良かったです。
犬と猫が主人公だからといって、ほのぼの系だと思って読むと結構びっくりする作品ですね(笑)
個人的には、アスター・リゼル・ゼノの3匹の関係性が一番の魅力だったと思います。
35話でまとまっているので、謎を追いながら3匹の旅を最後まで見届けたい人には、ちょうどいい長さの作品だと思いました。