ありきたりな手出して申し訳ないのですが。とても神秘的で、とても美しい物語だと感じました。
日本の神々に独自の設定をする……のは、よくあるのですが、その世界観を際立てる言葉選び。この作品はとにかく、作者様の言葉選びのセンスが光っています。言葉が神秘的な色と空気を実現しているのです。
世界観としては、日本の神々をモチーフにした、和風ファンタジー世界。古代っぽい感じでしょうか。
物語の中心人物はふたり。
ひとりは、火宮槌(カグツチ)族という一族の息子にして、軍神の加護の証である赤髪を受け継いでいる少年、出雲さん。気性の荒い男の子です。
もうひとりは出雲くんの乳兄弟でノッポな少年、清春さん。大人しくて、のんびりとした雰囲気の少年です。
汗握る激しいシーンはありません。出雲さんの感情は荒々しく、さらっと残酷なことをしてしまうこともありますが。兄弟とも友人とも付かない、どこか強い絆を感じる出雲さんと清春さんの日々が淡々と綴られている。そんな感じの作品です(そんな感じってどんな感じやねん)。ブロマンスタグが付いているので、男同士の絆はあるものだろうと言われればそうなのですが、特筆すべきは情景描写です。
読んでいて、ひしひしと感じるのです。言葉が神秘的で美しい色や空気を運んでいる、いえ、作り出していると。(レビュー者の語彙力の無さがそれを台無しにしている……申し訳ない)。これはもはや、一種の芸術です。
色付きの墨があると思いますが、その色付きの墨で描いたみたいな、柔らかくて神秘的な自然の景色がありありと思い浮かぶのです。その中を歩く、まだ十代前半と若いふたりの少年。古代の和服を着て
夏の緑にも、秋の赤や黄にも赤髪がよく映えます。
聞こえてくる音もよく、直接的には記されていなくとも、木々や草が風に撫でられる柔らかな音が聞こえてきそうで(レビュー者の脳内補正入ってます)、その中を角笛や牡鹿の淋しげな音がピイイと鳴る……。
おすすめです。未読の方はぜひ、この神秘的な情景の美しい、芸術作品を味わってみてください。