第2話

 ハルトはアカリと別のクラスだったから、どういった不具合があったのか、知らなかった。


空水そらみ、お前、家が近所だっただろ。油皮ゆがわの荷物、持って帰ってくれ」


 空水はハルトの、油皮はアカリの名字だ。

ハルトの所属するサッカー部の顧問でもある、アカリの担任に頼まれて、引き受けざるを得なかった。

 今朝の無神経な発言が、アカリの不具合とは何も関係ないと分かっていたが、何となく罪悪感のようなものがあったのも、理由だった。


 とはいえ、授業は映像授業とリサーチ研究がメインで、すべて学校配布のタブレット端末で完結するので、荷物も体操服くらいだった。


 これもハルトの毛嫌いする技術革新によるものだ。かつて学校で教えていた“知識”の類は、覚えるものではなく“引き出すもの”になった。街に溶け込んでいるヒューマノイドや、タブレット端末で簡単に検索できるようになったし、自分の脳内にチップを埋め込んで最先端の情報を常に更新している者さえいる。(もちろんハルトはそんなことしていない)それに伴い「何を知ろうとするか」の方が教育の力点となったわけだ。




 アカリの家を訪ねる時、ハルトはいつも不思議な気持ちを抱く。

 この父親と母親(二人とも同じくヒューマノイドだ)は、アカリを直接産んだわけではない。それでもアカリは「お父さん」「お母さん」と呼ぶし、それはハルトが両親に対して呼ぶものと同じ温かみを帯びていた。


 この人たち(人ですらない)は一体何なのだろう? 家族を演じているのか? 屁をこいて笑い合ったりするのだろうか? ヒューマノイドから屁が出るのかどうか、気にしたこともなかったが。




 玄関で、アカリの母親が出迎えた。


「あら、ハルトくん、ありがとうね。うん、アカリは大丈夫よ。二、三日で戻ってくるって。

 ところで、アカリからあの話は聞いた……?」

「あの話?」

「大事な話だから、今日会ったらそろそろ話すつもりだって言ってたのに、何も言ってなかった?」


 ハルトには何も心当たりがなかった。

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