生涯最も晴れがましい日に、最悪の悲劇に
見舞われた女性 ロクサーヌ。
好事魔多しと言うが、それは余りにも残酷な
永劫にも勝る悲しみと苦しみの時間。
夫も純血も、生命すらも奪われた血と泥濘に
沈み込む彼女が最後にどうしても拘った
証、左手の薬指に嵌められた誓いの指輪も
乱暴にも指ごと切り取られた。
酷い話を淡々と書いて行く、その筆致に
知的な誠実さと優しさが見え隠れして
驚かされる。
余りにも悍ましい陵辱と殺戮とを渇いた
筆致で、過ぎる事も足らぬ事もなく書き
遂せる作者の力量には舌を巻く。のみならず
このタイトル『ロクサーヌ』が話の肝で
あるのは間違いないが、敢えてタイトルを
女性の名前にするセンスには脱帽する。
因果応報の怪談。
それだけに、作者の技量と胆力が要る。
見事にそれらを使い熟している。