第50話 この世界で生きるのなら、神にでも成り果てるしかなく



 この世界は不条理に満ちている。


 幸せなどなく、死ぬ事が幸福になりつつある世界


 優しさなど無意味で


 最後は奪い、殺し、堕ちて、窶れに変わる


 魔王軍等というふざけた存在が消え去った今の世界ですらこれだ


 僅かに生き残っている魔将が人々を殺し


 窶れの王が全てを汚し、堕ち果てさせようとし


 災厄が何もかも奪っていく


 この世界にはもう神等存在しないのだろう


 救い等、この世界にはなく、人々は澱み、狂い、蝕まれていく


 だからこそ――


 私自身が神になれば、全ての柵から解き放たれると信じていた


 どのような神でもいい、神でさえあれば―――


 だが、人の身、それも窶れと同類扱いされる、災厄の魔女と蔑まされる私が、神になるには、途方もない力が必要だ


 それでも私は人を捨て、神にならなくてはならない


 魔女の力だけは求める癖に、人間達は魔女を蔑み忌み嫌う。


 聖人と噂される人間が裏では魔女を嘲笑しつづける


 外面だけは良い貴族が、人間をあてがい絞りつくそうとする


 それは何故か?  


 私が魔女だからだ。


 人には出来ない魔術を使いこなし、人の人生を簡単に変えうる秘薬を作れるからだ


 あぁ、私が神であるならば、奴らは平伏したのだろうか


 私は人の住む世界から離れた、もう人間と関わりたくなかったからだ。


 逃げた先は死の森、本来は人間が住む場所ではない場所


 近くにある集落等は、ここ以外に暮らせる場所がなくて仕方なく住んでいる、堕ちた人間達。


 奴らが態々ここに来ることはない


 確かに死の森は死と隣り合わせの世界ではあるが、

 

 これほどまで心が楽になった事は無い


 思うがままに生きて


 思うがままに自由を謳歌出来る

 

 それに死の森と言えどこの辺りならば凶悪なドレイクやドラゴンなども少ない


 悪魔の獣王もこの辺りにはこない


 ならばゴーレムでも作っておけば、私は自由なのだ


 ここで静かに暮らそう











 私は人間の欲望と浅ましさを舐めていた


 まさか、我が秘薬欲しさに、人間達を送り込んでくるとは・・・・


 大半はゴーレムやその前のモンスターの前に散ったが


 ランクが25を超えているような化け物共を送り込んでくるとは・・・・


 魔女の秘薬が欲しいなら、金で買えばいいだろう


 何故私を捕まえて無理やりに作らせようとするのか・・・


 それほどまでに魔女が憎いか?


 それほどまでに浅ましいだけなのか


 人間の欲望は恐ろしい、それだけは窶れに匹敵するだろう


 いや、だからこそ窶れには人が多いのだろう


 恐らくはここ以外に逃げても奴らは追いかけてくるだろう


 最早死ぬか、それ以外か、それしか私の前に道はない


 ならば、私は神になろう。


 神の如き力を得れば、人間共も諦めがつくだろう


 それでも諦めなければ神の力で滅ぼしてやる


 だが、その秘薬を作る為には素材が足りない。


 神へと至るにはドレイクの王やドラゴンの王の素材が必要だ。


 何もかも足りない。


 強大なる存在を呼び出そう


 ドレイクやドラゴンを倒す事が出来る存在を


 我が秘術を持てば、力ある世界から英雄を呼び出せるだろう


 そしてそれを使役すればいい。


 召喚時にはその存在に様々な力も付与される


 今は亡き私が秘術で呼び出し使役していたモンスターですら、ランク30を超える力を持っていた。


 それもあさましい人間達に斃されてしまったが、今回は違う


 全身全霊を用いて、完全な儀式を用いて呼び出そう


 それだけ私に負荷がかかるが、いずれ神へと至るには力が必要だ


 使役した英雄は私が神になった暁に、共に上の世界に連れて行ってやろう


 どのような存在が現れるか、ドラゴンならば、素材集めに大いに役に立つな


 さぁ、はじめよう










 儀式を行い数日、漸く最後の召喚の時まで来た。


 召喚魔術の経過は順調だ、これならばかなり強力な力を付与した英雄を呼び出せる


 最後まで問題なく、最後の言葉を紡ぎ、召喚を行う―――


 召喚に成功した時に感じる力を持っていかれる虚脱感を感じ、だが同時に


 恐らく今までの中で最高の存在を呼び出せた、その確信がとれ―――


 待て・・・


 力が抜けて・・・・・


 私は・・・・


 なにを・・・・・


 よび・・・・・・・
















―1日目 朝

―ランク:308

―我が友:286

―冥府の王:217

―余ロード:225

―龍ロード:150


 はい。


 アルトアネさん復活!!

 

 アルトアネさん復活!!


 目の前には骨だったそれから一気に復活し周囲をキョロキョロとしている美しい女性が居た。おぉ、何というか凄く久しぶりに女性を見た気がするな。


 最後に見たのはゴーレムを倒して抜けてきたあの重戦士さん達だったな、僧侶さんが女性だった筈だ、あれ? 魔法使いはどうだったか・・・もう覚えてないわ。


 そして【速報】


 アルトアネさんだが、どうやら死んだの今日だった模様。


 なんで白骨化してるん? と思ったんだが、これまた最近うちの知恵袋役になりつつある冥府の王が言うには、多分自分を召喚したせいで足りないもの全部持っていかれたからだそうな。


 そりゃあねぇ、呼び出した存在がループ能力とか付与されたら、普通は耐えきれんよな。で、そのアルトアネさんだが、目の前にいる自分がどうやら自分が呼び出した召喚者だという事が分かったようで、直ぐに使役しなくては! とかやってきた。


 うむ至極もっともだな、その為に呼び出したんだから。


 ちなみに家の中で復活させたので物理的に巨大な我が友や余ロード、龍ロードはお外で待機中です。冥府の王は驚かせたら面倒って事で姿を隠して近くにいる。


 アルトアネさん曰く、なんで使役出来ない!? と悲鳴みたいな事を叫んでいるが、多分こう、ランクとか実力差で物理的に支配出来ないんだろう、なんか縛りみたいなのがかかったなーって傍から破壊されてるのが分かるし。


 今も若干半狂乱になりつつも頑張っているアルトアネさんだが、このままでは埒が明かないので、とりあえず落ち着いてもらうことにしました。


 あ、見た目はこう・・・なんて言えばいいのか、妖艶な魔女さんでしたね。世の中の男性はきっと喜ぶと思うよ。


 自分?


 いや、なんだろうね、まったくそういうの感じないわ・・・神になったせいかなぁ。





―またいずれ





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