このお話は、語り手がある人物を観察し、報告書として記録していく連作短編です。無口で近寄りがたく見えるその人物は、仕事では端的な感謝を伝えますし、弟が怪我をすれば本人の自尊心を傷つけない形で仕事を組み替えます。また、道場で慕われて多くの手紙を受け取る姿や、賑やかな兄弟げんかからは、彼の意外な人気と人間味が浮かび上がります。あるとき弟は、兄が大きな花束を抱えている姿を見て恋人の存在を疑い、後を追います。しかし花束の行き先は、殉職したお母さんの墓でした。母を失った兄弟の過去を知った語り手は、観察対象が繰り返す「自分も守るべき対象に自分自身を入れろ」という言葉の重みを考えるようになります。強さと不器用さ、兄弟愛、そして内面を、穏やかな視線で描いた作品です。あなたもぜひ