神や怪異を扱う「神格鑑定局」を舞台にした現代ファンタジー。
異能を持つ少年・新が出会ったのは、千年ものあいだ眠り続けていた謎の巨神。
怖い神様なのかと思いきや、どうにも様子がおかしい。
子どもには優しいし、ちょっと人間臭いし、伝承で語られている姿とはずいぶん違うようで……?
「悪路王」「大多羅法師」「ダイダラボッチ」と、バラバラに見えた伝承が少しずつ繋がっていくのが面白いです。
そして忘れてはいけないのが、神格鑑定局のベテラン・高村さん。
異能はないけれど、神様相手でも必要なら土下座(笑)
この人がいるだけで、シリアスな場面にも絶妙な安心感があります(*'ω'*)
少年と巨神、そして土下座が得意なおじさん。
この三者がどう繋がっていくのか。
神話や伝承の謎を楽しみつつ、じんわり温かい気持ちにもなれる物語です!
『玄の箱』の中に広がる、どこか懐かしく牧歌的で、平和で優しい夢の世界。そこに眠る巨神・阿玄の過去を知るほど、物語に惹き込まれていきました。
心優しかった巨神がすべてを奪われ、「悪路王」と呼ばれるまでに至る過去の描かれ方は圧巻で、とても心を打たれました。和の世界を感じさせる言葉遣いや情景描写も美しく、その世界観も大きな魅力です。個人的には、要所で交わされる東北の方言もとても好きでした。
そして、長い時を孤独の中で過ごしてきた阿玄と、異能を持って生まれたことで居場所を失った少年・新。傷ついた二つの魂が出会い、心を通わせていく姿には、じんわりと胸が温かくなりました。
新の小さく揺れる心や、家族それぞれが抱えていた傷や想いも丁寧に描かれています。そして箱の外では、異能を持たない高村が奔走します。彼の渾身の土下座も必見です。
辛く悲しい出来事もあるけれど、最後に残るのは人の優しさでした。
心が温かくなる物語で、涙なしでは読めません。読後感はとても爽やかです!
完結後のレビューになります。
神や妖怪といった超常のモノが跋扈する現世。その中に於いて、人もまた例外ではない。
異能を持つ少年、新(あらた)
彼はその異能ゆえに母親から拒絶されていた。
行き場を失い、ふさぎ込む新。そんな彼が一つの小さな箱に出会う。それはかつて都を襲ったとされる、伝説の悪鬼「悪路王」が封じられた箱だった。
箱に取り込まれた新と悪路王の邂逅が始まる中、箱の外では異能無き鑑定局員高村が新を救うために奔走する。
新は無事に箱から出ることが出来るのか?
悪路王という名に秘められた悲しき過去とは?
高村と新の父親との関係とは?
三つの物語が交互に織り成し、今と過去を行き来する。物語の行方は如何に?
日本の神話が独自に解釈されており、上手く物語に組み込まれています。日本神話や妖怪が好きな方は得に楽しめるでしょう。
おばあちゃんや高村さんといった、異能があるわけではないけど他人を救える人がとても上手に優しく描かれています。
その一方で孤独に苛まれた人の呪詛の描写も容赦ありません。それでも最後にはちゃんと救われる辺りに、作者様の隠しきれていない光属性が滲み出ていますね!
時折辛い展開もありますが、誰でも楽しめる作品だと思います。是非読んでみて下さい!
ちなみに同作者の別作品「隠国の巫女 【神格鑑定局】」の別作品では、主人公新が鑑定局員として登場します。気になった方はこちらもチェックしましょう。
主人公の少年、采女《うねめ》新《あらた》は、湖海さんの別作品の登場人物です。つまり、本作品はスピンオフと言って良いかと思いますが、しっかり単体で楽しめます。
本作品では、現段階(2026/8/27)で、新少年とダイダラボッチ『玄《くろ》』の出会いまでが描かれています。
新は家庭で悲しみを抱え、箱に封印された玄もまた悲しみを抱えています。両者には運命的な繋がりもあり、玄は新を選びます。
この作品が描く『日本人と神の関係』は、湖海さんの深い学問的知識の裏打ちがある上で、独自の持ち味で現代的娯楽性を加味なさったもので、他にないものと思います。
また、玄が封印されていた箱の中、『村』の描写が美しいことも特筆したいと思います。
個人的には、岩手のお祖母ちゃんに、ぶち共感しております。
万人にお勧めできますが、柳田國夫とか好きな人には更にお勧めです!
(๑•̀◡•́)و✧