両親を殺した犯人を十七年間も探し続け、復讐のために殺害した主人公。
長年の思いを成し遂げた時。
充足したその瞬間、彼自身の腹にも刃が刺さっていた。
犯人が刺したのだ。
二人はほぼ同時に死んだ。
死んだ後すぐに、主人公は世界の真実知る。
この世の命ある者、すべてのあり様を知る。
この世界にいる、すべての生き物を知る。
雨を冷たいと感じる女。
夢を見る老人。
空腹の犬。
海を泳ぐ魚。
すべての生き物の感覚と思考を、彼は知る。
この話描く恐怖は、多くの場合には〝怖さ〟として描かれななかった考え方、そのものだ。
宗教哲学的な唯心論。
心理学な超自我。
生態学的な地球ガイヤ仮説。
そのすべてが文字通りにまるで真実であったとしたなら。
その世界はいったいどうなっているのだろう。
そんな恐ろしさだ。
考えてほしい。
もしも世界に他者が存在しないとしたら。
言葉のままの意味で、この世には自分しかいないとしたら。
愛も憎しみも、罪も赦しもない。
世界と呼ばれる場所には孤独しかない。
ずっと変わらずに独りでいるしかない。
この物語を読み考えてしまった者は
ともすれば考えてしまう。
もしも、本当にそうだったならばと想像する。
そして根源的な思考の深淵へ転がり落るかもしれない。
きっと、そこに答えはない。確かなものは何もない。
だからこの物語を読むのなら、何も余計な想像はしない方がいい。
読んでしまったなら、物語の事を考えない方がいい。
さもないと───────
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