第3話 応援してくれる人たち
ステッカーを持って、リスナーさんに会いに行く。
そんな配信を始めてから、ミテパリの日常はさらに変わっていった。
「会えたね!」
「ステッカーありがとう!」
「これからも応援してるよ!」
画面の中でしか知らなかった人たちと実際に会い、直接そんな言葉をかけてもらえる。
それが、二人にとって何より嬉しかった。
そんなある日、仲良くしてくれていた一人のリスナーさんから、こんな提案をもらった。
「ステッカーだけじゃなくて、オリジナルグッズをもっと増やしてみたら?」
その人を、ここでは\*\*『お母さん』\*\*と呼ぶことにする。
「オリジナルグッズかぁ……」
アイデアは面白い。
でも、大きな問題があった。
ミテパリは――
**二人そろって、とにかく不器用だった。**
何を作ればいいのかも分からない。
作り方なんて、もっと分からない。
そんな二人を見かねたのか、お母さんは自分でオリジナルグッズを作って、ミテパリにプレゼントしてくれた。
カレンダー。
ペン。
ペンライト。
「え、これ本当に自分たちでも作れるの?」
完成品を見ながら、二人は半信半疑だった。
でも、お母さんは笑って言った。
「大丈夫だよ」
それから、作り方を細かく教えてくれた。
必要な素材。
作るときのコツ。
失敗したときの直し方。
分からないことを聞けば、そのたびにアドバイスをくれた。
自分の時間を使って、何も分からないミテパリのために付き合ってくれる。
そんなお母さんの存在に、二人は大きな安心感を覚えていた。
「この人なら信用して大丈夫だね」
いつしか二人とも、そう思うようになっていた。
そして、ミテパリのグッズ作りが始まった。
中でも一番苦戦したのが、オリジナルのペンだった。
細かい。
とにかく細かい。
「無理!できん!」
「また失敗した!」
夜中の部屋に、二人の叫び声が響く。
一つ失敗してはやり直し。
また失敗しては、お母さんに聞く。
素材が足りなくなれば、次の日にはお店へ走った。
仕事でもなければ、学校の宿題でもない。
それなのに、気づけば夜通し作業していた。
今思えば、工作でここまで必死になったのは人生で初めてだったかもしれない。
何度も投げ出したくなった。
「もう無理じゃない?」
そう言いながら手を止めた夜もあった。
それでも続けられた理由は、たった一つだった。
**待ってくれている人がいたから。**
DMを開けば、
『完成楽しみにしてる!』
『欲しい!』
『待ってるね!』
そんなメッセージが届いていた。
その言葉を見るたび、
「もうちょっと頑張ろうか」
と、また二人で作業を始めた。
そしてついに、完成した。
出来上がったペンを並べて、写真を撮る。
完璧ではない。
お店で売っている商品のように綺麗でもない。
それでも、二人にとっては特別なペンだった。
その写真を見て、最初に「欲しい」と言ってくれた人がいた。
ここでは、\*\*『おばあ』\*\*と呼ぶことにする。
おばあは、ミテパリにとって少し特別なリスナーだった。
なぜなら――
**家族でミテパリを見てくれていたからだ。**
それを知ったのは、ある日の配信中だった。
コメント欄に、いつも見に来てくれていた\*\*『カンガルーさん』\*\*からコメントが流れた。
『ミテパリに伝えたいことがある!』
「え!?」
「何!?」
二人は一瞬、身構えた。
何かしてしまったのか。
何か言われるのか。
恐る恐る続きを待つ。
そして、カンガルーさんから送られてきたコメントは、二人がまったく想像していなかったものだった。
『実は、おばあは母です!』
「……え?」
一瞬、理解が追いつかなかった。
そして――
「マジ!?」
二人同時に声を上げた。
そんな偶然ある!?
別々のリスナーさんだと思っていた二人が、実は家族だった。
それを知ってから、おばあファミリーは家族でミテパリの配信を楽しんでくれるようになった。
その事実が、ミテパリにはたまらなく嬉しかった。
自分たちの配信を、一人だけじゃない。
家族みんなで見てくれている。
「私たち、家族で楽しんでもらえる配信になったんだ……」
本当は配信中に自慢したいくらい嬉しかった。
でも、そこはグッと堪えた。
そして完成したペンを持って、ついにおばあファミリーに会いに行った。
実際に会ったおばあファミリーは、想像していた以上に優しく、温かい人たちだった。
そして、おばあたちはミテパリにとって、**初めてオリジナルグッズを買ってくれた家族**になった。
でも、ミテパリにとって忘れられない出会いは、ほかにもあった。
そもそも二人が初めてリスナーさんと直接会ったのは、とある道の駅だった。
そこへ会いに来てくれたのが、
**『ネイルさん』とその子どもたち。**
そして夫婦の、
**『うさぎさん』と『亀さん』。**
初めての“凸”。
画面越しで話していた人が、本当に目の前にいる。
二人とも人見知りだったミテパリは、最初かなり緊張していた。
「どんな人たちなんだろう……」
少しビクビクしながら待っていた。
でも、そんな心配はすぐになくなった。
みんな、本当にいい人たちだった。
うさぎさんと亀さんは、物静かで穏やかな夫婦。
「応援してます」
そう言って、わざわざ会いに来てくれた。
ネイルさんはというと――
想像していた通りだった。
明るくて頼もしそうな、まさに“姉御肌のお姉さん”。
そして後に、ネイルさんの子どもからミテパリは**人生で初めてのファンレター**をもらうことになる。
年齢も違う。
性格も違う。
生活も違う。
きっと配信をしていなかったら、出会うことのなかった人たち。
そんな人たちが、
「ミテパリに会いたい」
ただそれだけのために足を運んでくれた。
お母さんは、グッズ作りを一緒に考え、何度もアドバイスをくれた人。
おばあファミリーは、家族で配信を見て、初めてグッズを買ってくれた人たち。
うさぎさんと亀さんは、「応援してます」と直接伝えるために会いに来てくれた人たち。
ネイルさんとその子どもたちは、会いに来てくれて、初めてのファンレターまでくれた人たち。
みんな違う。
出会い方も、関係も違う。
でも、一つだけ同じだった。
**ミテパリを応援してくれている。**
それだけで、二人には十分すぎるほど嬉しかった。
夜。
配信を終えたあとも、二人はなかなか眠らなかった。
もらったメッセージを読み返したり、今日あった出来事を話したり。
「なんかさ……」
「うん?」
「こんなにいい人たちに出会えて、私たち幸せすぎん?」
二人で笑った。
閲覧ゼロから始まった配信。
誰も見ていない画面に向かって喋っていた二人が、今では自分たちに会いに来てくれる人たちに囲まれている。
こんなに幸せでいいのだろうか。
本気で、そう思っていた。
人を信じることに、理由なんて必要なかった。
優しくしてくれる。
応援してくれる。
一緒に笑ってくれる。
それだけで十分だった。
この頃のミテパリにとって、
**配信で出会った人たちは、もう画面の向こうの知らない人ではなかった。**
大切な仲間だった。
そして二人は、この出会いを心から幸せだと思っていた。
――このときはまだ、
**「信じられる人が増えていくこと」を、少しも怖いとは思っていなかった。**
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