第27話 パワーレベリング3


「お疲れ様です。休めました?」

「千色さん。いやぁ、見せたいものがあって早く来ちゃいました!」

 と野沢さんが見せてくれるのは鉄の剣だ。

 鑑定してもただの鉄の剣なのだが、作り上げた事が驚きだ。


「お! 野沢が作ったの? イテッ」

「鮫島? 野沢さんだろ?」

「何なに? へぇ、すごいね!」

「あーしにも見せて」

 菅野と麻倉が前に出てきて、野沢さんはタジタジだ。


「あぁ、電話で話した麻倉と菅野です」

 野沢さん達に紹介する。


「麻倉桜(アサクラサクラ)、20歳です!」

 茶髪でピアスをしているどこか幼い顔の麻倉が挨拶をする。

「あーしは菅野希星(カンノキララ)!よろしくぅ!」

 金髪にセクシーな服装の菅野が挨拶をする。


「「よ、よろしく」」

「2人ともその格好でいくのか?」

「なわけないでしょ? 私が作った革鎧があるからね!」

「そうそう、ここに入ってるし」

 菅野がマジックバッグを叩く。

 そういえば麻倉は革職人だったな。

「ほー、そういえば麻倉は職人だったな。なら大丈夫だな」

「あー! なんか期待してた?」 

 笑顔の菅野が聞いてくる。


「あのな、心配だろ?」

「あーね! 千色っちはそう言う感じだね!」

 どう言う感じなのかわからんが、流石におっさんの中に若い子が入るんだから少しは警戒してほしいもんだ。

 それと、一緒にいるこっちが変な目で見られるからな。


「じゃあ、とりあえずみんな着替えてきましょうか」

 俺たちは更衣室に入り装備を整え、ロビーで待つ。

「お待たせー!」

 菅野も麻倉も革鎧にロングブーツ、ジーンズとさっきよりはマシになったな。


「こ、これは麻倉さんが作ったのかい?」

「そだよ! いい出来でしょ?」

 同じ革職人の新見さんが麻倉と話をしている。


「菅野は杖か、いい魔石だが誰かに作ってもらったのか?」

「あーしの杖は秋桜と影野に頼んだし」

 影野が魔石職人で秋桜が魔道具師だったな。

「それは良かったな。2人とも元気か?」

「色々研究してるみたいだよ。あーしにはよく分かんないけどね?」

 と言って麻倉を見る。もう話は終わったようだな。


「じゃあ、2人はこのダンジョン初めてなので1階層から行きましょうか!」

「「「おぅ!」」」

 8人の大所帯だが、戦闘職は俺、鮫島、菅野の3人だけだ。


「『ファイアーボール』」

 菅野が魔法でゴブリンを燃やしてしまう。

「あー、菅野も少し見ててくれるか?」

「ん? なんでー?」

「手加減しねーとレベリングにならねーだろ?」

 ……鮫島が言うか?


「まぁ、そんなとこだからよろしくな」

「あーしだとオーバーキルだね」

「そう言う事だな」

 菅野は大人しく後ろに回ってくれる。


 ダンジョンは順調に進んでいき18階層に来た。

 ここまででイレギュラーは0。誰かがイレギュラーの大元を断ち切ったのならいいのだが。


 今が11時過ぎなので、今日は行けても30階層までだな。

「野沢さん達には悪いんですが、明日までレベリングしないといけないと思います」

「それは構わないが大丈夫かい?」

「まぁ、こっちは大丈夫ですよ」

 予定が狂うのは仕方ないからな。


「先を急ぎましょう」


 20階層ボス部屋前。

「あーしにやらせて!」

「べつにいいが大丈夫か?」

「楽勝っしょ!」

 菅野がやると言うと野沢さん達は不安そうな顔をするが、まぁ、普通なら問題ないだろうな。


「よし、んじゃ行くぞ?」

「「「おぅ!」」」

 扉を開けるとトロールだ。

 トロールは高い攻撃力と圧倒的な再生能力を持つ5メートルほどの巨人だ。

 もちろんこんな低階層にいるはずがないのでイレギュラーになる。


「お! トロールじゃん! イックよー!『フレイムジャベリン』」

 “ジュワッ”っと2本の焔の槍がトロールの肩に刺さり肌を焼く音がする。


「菅野! まだだぞ!」

「わーってるって!」

 杖をフリフリ菅野は構えると、

「『サイクロン!』アーンド『フレイムピラー』」

 竜巻をトロールにぶつけると焔の柱を発生させる。すると竜巻が炎を巻き上げ、焔の渦がトロールを飲み込む。


『ウギャアァァァァァ』


「いっちょあがりぃー!」

 とこちらを向く菅野だが、

「ッッあっぶねーぞ!」

 “ガンッッ!”

 トロールが投げた棍棒が菅野を狙うが、鮫島が拳で弾き飛ばす。


 トロールはそのまま焼き焦げて倒れ、ドロップになる。

「ッ……あ、ありがと」

「ったく、最後までちゃんと見ろ」

「うん……」

 はぁ、俺も剣を構えたが鮫島が一歩早かったな。


「倒せたからいいが、最後まで気を抜かないようにな」

「はい、ごめんなさい」

「分かったならいいさ。鮫島もナイスだ」

「おう!」

 鮫島とグータッチして、20階層も無事に攻略できた。

 ドロップはトロールの皮、魔石だ。そして宝箱からはハイポーションが2本でたので、野沢さん達に渡しておく。


「危ない時には使ってくださいね」

「あ、あぁ、ありがとうございます」

 やはり回復薬は持っておきたかったようで、素直にマジックバッグにいれる。


 下に降りる前にここで昼飯を食べる。

「よし! 千色、今日は何?」

「鮫島? 自分の分くらい持ってこいよ」

「いいだろ? って、野沢達は弁当かよ!」

「野沢さんな? 愛妻弁当ですか?」

 野沢さん達は照れながら、

「はい! ちゃんと作ってくれまして」

「僕は自分でですけどね」

 笑う時透さんは結婚してないようだ。


「私達も持ってくるの忘れた」

「んじゃ、カレーでいいか?」

「おう! コノ壱じゃん! カツカレーある?」

「……あるよ」

「よしっ! さすが千色!」

 カツカレーの400gの3辛を渡してやる。

 麻倉と菅野は300gだが、辛さ普通の野菜カレーだ。


「ちょ、ちょっと鮫島、あーしに一切れちょうだいよ」

「えー……まぁ、いいけど」

 あれ? 菅野の様子が変だな。

 周りを見ると赤くなってる菅野を笑って見守る麻倉や微笑む野沢さん達。


「へぇ」

 鮫島はいつもの調子でガツガツ食べている。

 俺もカツカレーを食べながら見ていると、

「私にもちょうだい!」

「はいよ」

 麻倉が俺にもらいにくるので一切れ皿に移してやる。

『気付かないフリね?』

『分かった』

 麻倉に小声で言われ、まぁ、微笑ましいなと笑みが溢れる。



「さて、行こうか」

 食休みも済ませ、下に下りていく。


 問題なく先に進んでいくが、27階層でゴブリンキングが出てくる。

「野沢さん達は中心に集まって! 鮫島! 菅野!」

「おぅ! 千色キングは任せるぞ!」

「あぁ! すぐ倒す」


 ゴブリンキングは大量のゴブリンを召喚してくるので厄介だ。

 橙を纏い剣に赤を纏わせると剣は炎を噴き出す。


「『炎剣乱破!』」

 マロウ爺さん直伝の技で剣圧を飛ばしてゴブリンキングを狩ると、ゴブリン達は消えて行く。


「ふぅ、みんな無事か?」

「こっちは無事だ」

「こっちもオッケー!」

 鮫島と菅野がちゃんと守ってくれていたのでみんな無事のようだ。


「にしても千色先生、カッコよかったね?」

「あはは、教えてもらった技が決まってよかったよ」

 麻倉に言われ、大人気なく技名を叫んでしまいかなり恥ずかしい。


「えんけん……」

「や、やめてくれ」

 流石に真似されるとキツいので、さっさと宝箱を開けて入っていたものを鑑定する。

 中には琥珀の杖とミスリルのインゴットが3つ入っていた。


「菅野はこれな?」

「あー、ありがと!」

「で、野沢さんにはミスリルのインゴットですね」

「い、いいんですか?」

 菅野と野沢さんに渡す。

 ついでに野沢さん達にレベルを聞くと37付近なのでやはり明日も来ないといけないようだな。

「ほい、忘れてるぞ!」

 鮫島が持ってきたのはドロップのゴブリンキングの剣と魔石だ。

 受け取り収納にしまう。

「さぁ、行こうか」

「「おう」」


 30階層に到着すると、18時といい時間なのでさっさと扉を開ける。

『ゴァアァァァァ』

 叫んでいるのはエルダートレントだ。

 巨木のモンスターで、魔法耐性を持っている上位モンスターだ。

 

「またイレギュラーかよ! 俺が行く!」

 鮫島が橙を纏うとダッシュでエルダートレントの攻撃を掻い潜り、拳で殴りつけ、回し蹴りを放つ。

「キャー! カッコいぃ!」

 と菅野は興奮しているな。

「あはは、鮫島やっちゃえ!」

 麻倉も声援を送っている。


 鮫島の攻撃で身体を削られるエルダートレントは再生能力が高いので削られた側から再生している。

「くっ! めんどくせぇな!! 『波動撃』」

 掌底が入ると攻撃が貫通したように逆側が粉砕され、エルダートレントはそのまま消えていった。


「おー!」

「お疲れ! 鮫島!」

「……」

 何故か黙る菅野を横目に鮫島に声をかける。

「チッ! 中々手強かった」

「だな。でもいい攻撃だったな」

「俺も属性攻撃できれば楽勝なんだけどな」

「教えてやろうか?」

「ん? ……そのうちな」

 鮫島も他の色を覚えることはできると思うんだがな。


 ドロップはエルダートレントの木材、魔石で宝箱からはホーリーソードと言う聖騎士の両手剣が入っていた。


「聖騎士は誰だっけ?」

「ん? 葵だよ」

 そうだった。仁科葵(ニシナアオイ)が聖騎士だったな。

「んじゃ仁科に渡すかな」

「だね。今度渡せばいいっしょ」

 

 ようやく30階層も攻略したので、モノリスに触ってダンジョンから出ることにする。

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