この世界では死者が24時間の間話すことができる。しかも意図的に嘘がつけないという不文律つきで。“警視庁死後証言捜査室”はそんな死者の言葉を聞き取り事件や裁判の証言を得る部署であり、聴取官として捜査室に勤務する御影冬花は「生者は嘘をつく。死者だけが真実を話す」を信条に職務へ当たっていたが……
少し不思議な設定を敷いたこの物語、ひと言で表すならば「対峙」の一作と言えましょう。
死者と対峙した冬花さんはすなわち死者の言葉と対峙することとなります。それは会話劇として綴られるわけなのですが、前提として死者は嘘がつけない。でも、主観である以上は剥き出したからといって真実であるかは知れない。冬花さんの信条は揺るぎないもののように見えてその実酷く脆いものです。でも、彼女はそれをしかと理解していて、故に死者と対峙し続けている。この事実がわかると会話劇に映されたものの真価が見えて、ぐっと作品に惹き込まれてしまうのですよ。
剥き出されることで包み隠される嘘のない言葉。それが語り切られる最終話で見出される真実とは?
(「残暑に効く本格ミステリー」4選/文=髙橋剛)