第4話 叔母の話

叔母が高校生の頃の話。


深夜、部屋でノートを広げ必死にペンを動かしていた。


叔母はその頃、漫画家を目指しており、毎晩遅くまで絵の練習をしていた。


だんだんと眠気に襲われ、頭がガクリと落ちる。


ハッと顔を上げる。


「あ……」


机に置いていた、鏡が目に入る。


鏡に映る自分の顔。


そして自分のすぐ後ろに立つ、見知らぬ女。


自分と同年代の、どこにでもいるようなごく普通の女。


そのせいか、不思議と怖さはなく、金縛りのように体が動かないわけでも、苦しいわけでもない。


鏡越しに目が合ったまま、時間が過ぎていく。


ふと、女が動く。


ポンと叔母の肩に手を乗せる女。


しっかりとした重みのある冷たい手。


「あ……」


そこから記憶は途切れ、気付くと学校の教室だった。


「あれ?」


慌てて教室を見渡す。


「ねえ、帰りカラオケ行くでしょ?」


「うん!行く行く!」


友達に声を掛けられ、自分でも驚くほど自然に返事をする。


友達と別れ、家路に着く。


帰りの電車の中で、昨夜のことを思い出し、自分の肩に触れる。


その瞬間、頭の中に鮮明な映像が流れる。


車の助手席に乗っている自分。


運転席には男が乗っているが、顔が黒い靄で包まれ見ることが出来ない。


楽しく会話をしながら、心の中ではどんよりとした気持ちが広がり、気分が悪い。


突然、鳴り響くクラクション。


ハッと顔を上げる。


電車の窓に映る自分と隣に座る昨夜の女。


隣に誰かいる気配はない。


ガラス越しに目が合ったまま、また時間が過ぎていく。


降りる駅に着き、黙って席を立つ叔母。


女は動かない。


それ以来、二度と女を見ることはないという。


何か訴えたかったのか、叔母に恨みがあったのかわからない。


思い出話のように、何度もこの話をする叔母。


「何回も聞いたよ」


「知ってる」


誰が指摘しても構わず話し続ける。


時折、手鏡を見て微笑む叔母。


肩に手を乗せ摩るように触る叔母。


私たちは誰も叔母の話を止めることが出来ない。

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