どこか影のあるイケおじの商人と、天真爛漫だがやはり生い立ちに影のある少女の二人旅を描く物語。
ある日村を訪れた商人の旅の目的地が自分の故地であると知り、少女は案内役を買って出る。少女は幼い頃から精霊の声を聞くことができ、それが出生の秘密と絡んでいるらしい。一方の男の方も襲ってきた盗賊たちを一瞬で叩き伏せ、どうも只の商人とは思えない。序盤の掴みはばっちりである。それぞれの秘密が少しずつ明かされ、やがて男の旅の目的が少女が故郷を失ったことと関係していることが判明する。男は親たちの仇の片割れなのか、と疑惑が湧く展開も緊張感を与える。このように読者を引っ張りつつ、やがて最後には全ての元凶との対決が待つ。徹底した王道ストーリーである。
白状すると評者には、終盤の対決場面や黒幕の造形などに若干物足りないと感じるところもあった。だが男の何年にも渡る苦悩が一人の少女との旅で少しずつ氷解し、最後には人生を取り戻していく展開は美しい。再生の物語を読みたい方にはおすすめの一作。