鮭の百合。奇抜な設定で意表を突かれましたが、重厚なストーリーに感情移入してしまいました。アイヌの文化を背景に、生を謳歌する鮭の群れ。しかし彼らには血にプログラムされた、残酷な運命が待ち受けています。生と死、生殖、同性同士の愛。簡単には表現できないテーマが、児童文学を彷彿とさせる端正な文章で丁寧に紡がれます。群れのために生きた二匹のメス鮭が、最後には自分たち自身のために泳ぎ、ともに果てていく姿の描写が素晴らしいです。生のままならなさ。それは私たち自身のことでもあるのだろうと思いました。