鮭×百合という斬新な組み合わせに驚嘆しましたが、非常に印象に残る重厚なストーリーでした。童話のように優しく、そして丁寧な筆致で描かれる彼女たちの純愛。運命に翻弄されながらも、懸命に生をまっとうする姿に胸を打たれます。愛と生の力強さ、あたたかさが心に沁み渡る感動の一作です。
読み返すたびに胸に迫る純愛……鮭って、求愛行動をしないんです。産卵も、我々が想像するような、生々しい交尾をするのじゃなくて、メスが産んだ卵の上に、オスが精子をかけるだけなんです。要は体外受精。産卵を終えた鮭はどうなるか? ゾンビみたいになるんです。ゾンビになったら愛されない?果たしてそうでしょうか?そんな鮭と鮭の、切なくて、切実な、「あいのうた」。いかがでしょうか?
鮭の百合。奇抜な設定で意表を突かれましたが、重厚なストーリーに感情移入してしまいました。アイヌの文化を背景に、生を謳歌する鮭の群れ。しかし彼らには血にプログラムされた、残酷な運命が待ち受けています。生と死、生殖、同性同士の愛。簡単には表現できないテーマが、児童文学を彷彿とさせる端正な文章で丁寧に紡がれます。群れのために生きた二匹のメス鮭が、最後には自分たち自身のために泳ぎ、ともに果てていく姿の描写が素晴らしいです。生のままならなさ。それは私たち自身のことでもあるのだろうと思いました。