♪ 悲しけりゃ、ここでお泣きよ〜。
というのは清水健太郎『失恋レストラン』。え、知らない?
本作は、雨の日に泣きたくても泣けない人だけに見えて来る喫茶店。
謎の店長朔さんと、やはり泣けなくてやって来た住込み店員小夜さんが迎えてくれます。
ただ座るだけで、メニューは
「温かい・冷たい」
「甘い・甘くない」
「話を聞いてほしい・そっとしておいて」「そばにいて・少し離れて」
などから選べます。
押し付けたり、こうだと説くわけではなく、(ここがポイント)ゆっくりと無理をせず、心を癒してくれます。
大事なのは、命。帰りたくない家には帰らなくていいんです。忘れて来たんじゃないんです。大切な命を持って来れたんです。
じんわりとした心地よい読後感を求めるなら、一度手に取ってみてください。あなたもきっと、ゆっくりと癒やされてくるはず。
こんなお店、あったらいいですよね。悲しけりゃ、ここでお泣きよ。あれ?やっぱり失恋レストラン?
雨の夜にだけ現れる喫茶店「星あかり」は、泣きたいのに泣けない人だけが見つけられる不思議な喫茶店。
ここは、傷ついた夜に、正しい答えを教えてくれる場所ではありません。
『ひとりにしてほしい。でも、帰らないでほしい』
たとえば、そんな一見矛盾した気持ちを、この物語では誰も否定しません。
温かい飲み物とともに差し出される、小さな星の札。そこには、こう書かれています。
話したい。話したくない。
そばにいて。少し離れて。
まだ、わからない。
誰かに決められた「正しい気持ち」ではなく、今の自分の気持ちを、自分で選ぶために。
この作品が素敵なところは、人生を一晩で解決しようとしないところです。ほんの小さな選択が、その人を次の朝へ連れていくのです。
本作は連作短編ですが、毎話変わる客たちの物語だけでなく、作品全体を通して流れる縦軸もまた、もうひとつの大きな魅力になっています。
訪れる客たちを支える主人公・小夜自身もまた、まだ雨宿りの途中にいます。客との出会いを重ねるたび、少しずつ増えていく「星あかり」の仕事。そして、明日を選べるようになっていく小夜。
さらに、彼女以上に泣けない店主・朔さんの秘密。
ただ優しい言葉をかけるだけではありません。傷を無理に許させず、悲しみを急いで終わらせず、その人が選んだ距離で、灯りを消さずに待っていてくれる。
そんな喫茶店です。
読んだあと、誰かのためではなく、自分のためにひとつだけでも、「明日の注文」をしてみたくなる物語です。
気になった方は、ぜひページを開いてみてくださいね(=^・^=)
※レビュー時点で公開中の五話までの内容になります。