築50年のアパート「さくら荘」。
そこを管理する74歳の大家は、病院で自身の検査結果を聞いたことをきっかけに、1年後にさくら荘を取り壊すことを決意します。
本作は、それぞれの住人が「さくら荘」をただの住居ではなく、自分の人生の一部として暮らしているところが特徴です。
大家と住人の視点が切り替わる構成も特徴的で、立場によって見え方が変わるのも、価値観の難しさを感じました。
また、キャラクターごとに異なる物語が展開されるため、連作短編的な感じがして、物語に厚みが生まれているように感じました。
アパートの取り壊しは、そのまま人生の比喩にもなっており、深みのあるテーマでありながら人物描写がコミカルで、何度もクスッとさせられました。
さらには、さくら荘の外にいる人物が物語に入り込んでくることで、地域社会にまで広がっていく展開が面白いです。
そんな身近さと温かさを感じられる群像劇を、ぜひお楽しみください。
築50年を迎えた「さくら荘」。
大家が決めたのは、一年後にこのアパートを取り壊すことでした。しかし、アパートにはもちろん、そこで生活している人もいて⋯⋯。
取り壊しをきっかけに動き始める、さくら荘の住人たちの人生を追いかけていく群像劇です。
【それぞれ違う、取り壊しへの思い】
「一年後のさくら荘の取り壊し」を前にしても、その受け止め方はまったく違います。
離れたくない。
良いきっかけ。
素直に受け入れる。
どうすべきか悩む。
一人ひとりの事情が丁寧に描かれているからこそ、それぞれの気持ちに寄り添いながら、読み進められるのが魅力です。
【生き生きとした、さくら荘の住人たち】
シングルマザーに、さくら荘の最古参、元アイドルに、未来を見据えた大学生――
それぞれの住人の背景や語り口がしっかりしているので、どの人の生き方も自然と追いかけたくなります。
【心に残った名台詞】
――ふーむ、いい機会なのかもしれないな。
さくら荘の取り壊しを聞いた、ある住人の言葉です。
住み慣れた場所がなくなることは、必ずしも悲しいだけではない。立ち止まっていた人生を再び動かすきっかけにもなる。
住人の中でも、一番気になる存在になった瞬間でした。
一つのアパートに暮らす、さまざまな事情を抱えた人たち。そんな彼らの人生と、取り壊しまでの一年をじっくり追いかけたい人に、オススメしたい作品です。