印象に残ったのは、第1話の「どうせ、いつでもロールバックできる差分だから」です。これが仕事の話ではなく自己認識になっている。自分は取り消せる一行だと思っている人間。ここが冒頭で一番好きなところで、同時にいちばん寂しくなりました。
しかも、そう扱われることを本人が便利だと思っているように読めます。取り消しは、もう一度やることではない。なかったことにすることです。そのあとに続く「ここで泣くのは、ただのリソースの無駄だ」も同じで、自分の涙まで計算資源として処理している。他人にそう扱われた結果なのか、自分の覚悟なのか。
それが読めるのは、地の文がすべてエンジニアの語彙でできているからだと思います。起動しっぱなしのプロセス、名前をヌルで塗りつぶす。一人称であることを説明ではなく文体そのもので示していて、こういう例をあまり見たことがありません。すっと入ります。
続きを楽しみにしています。