夏の夕暮れ。
縁側。
風鈴。
ひぐらしの声。
新しい畳のい草の香り。
冷たい麦茶と、おばあちゃんが何度でも出してくれるスイカ。
どこか懐かしい「夏休み」が、この物語にはたっぷり詰まっています。
舞台は、鮫ヶ井くんのおばあちゃんの家。
そしてその夏休みに、彼が連れてきたのは——
「大好きな先輩」。
……ええ。
『鮎に溺れる鮫心』を読んでいる方なら、それだけでもう、
「鮫ヶ井くん!!🤣」
となることでしょう(笑)
相変わらず好意を隠す気など微塵もない鮫ヶ井くんと、そんな彼に振り回されながらも、以前とは少し違う表情を見せる鮎原さん。
二人のやり取りは甘酸っぱくて、可愛らしくて、思わず何度も頬が緩みます。
でも、私がこの短編で一番好きだったのは、その賑やかなやり取りの奥に流れている、とても静かな変化でした。
夏は、毎年やってくる。
けれど、去年と今年が同じ夏になるとは限らない。
同じ季節でも、
誰と過ごすのか。
――誰が隣にいるのか。
それだけで、見える景色まで変わってしまうことがあるのだと思います。
この物語では、鮫ヶ井くんにとっても、鮎原さんにとっても、
今年の夏は、去年とは違う。
その理由を二人が同じように言葉にするわけではありません。
まっすぐに嬉しさを伝える人もいれば、
胸の奥に生まれた変化を、まだそっと自分の中だけにしまっている人もいる。
その違いが、とても二人らしい。
そして読んでいるこちらには、その言葉にならないものまで、夏の風に混じってそっと届いてくるのです。
特に鮎原さん。
素っ気なく返したり、
「寄り過ぎ」と言ったり、
相変わらず鮫ヶ井くんの勢いには振り回されているのですが——
気づけば、その場所で少しずつ力が抜けている。
笑っている。
その変化が、とても愛おしかったです。
鮫ヶ井くんにとって大切な夏の場所が、今度は鮎原さんにとっても、新しい思い出の場所になっていく。
そんな時間を覗かせてもらったような気持ちになりました。
もちろん、おばあちゃんのスイカ攻撃には笑いました🤣🍉
「またスイカ!?」
と思いながらも、それすら次第に、この家のあたたかさそのものに見えてくるから不思議です。
縁側で過ごす夕暮れから、少しずつ夜へ変わっていく空。
これから見える星。
川遊び。
お祭り。
花火。
まだ始まったばかりの夏休みを想像すると、この先の二人まで覗いてみたくなります。
けれど、この短編で描かれるのは、そのほんの一幕。
だからこそ、線香花火の小さな光のように、読み終えたあともじんわり残りました。
夏という季節は毎年来るのに、
「この人と過ごした、あの夏」だけは、きっと一度しかない。
そんなことまで思わせてくれる、優しく甘酸っぱい夏のお話です。
『鮎に溺れる鮫心』を追っている方にはもちろん。
本編をまだ知らない方にも、この縁側から二人を覗いてみてほしいです。
きっと、
「……この二人、どういう関係なの?」
と、本編まで追いかけたくなると思います😊✨
そして読後にはぜひ、作者様の近況ノートにある二人のイラストも。
……距離が近いです。
うん、大変、よろしいことです🤣🦈🐟💕(笑)