女神ルーチェと御使様

白河胡桃

女神ルーチェと御使様

 そこは人も獣も住めぬ、草も生えぬほどに熱く乾いた大地だった。女神ルーチェはそれを大層不憫に思い、一筋の涙を流された。


 その雫が朱く渇いた大地に浸み込むと、そこから生命の泉が湧き出でた。一粒の雫からそれは洋々と広がり、渇ききった大地の果てまで、大河となって流れ始めた。


 土地が潤い草花が生い茂る。はじめにこの世界に降りたのは聖霊だった。その銀色に輝く白き狼は女神ルーチェの願いに応え、冷たい雪を降らせ、熱く渇ききったこの世界を、人や獣の住まう世界へと変貌させた。


 草原に住み着いた人の子らは、獣に抗う術も持たぬ、か弱き者。彼らを守ったのも、また、女神ルーチェの遣わした白き狼だった。


 次第に数を増す人の子らに、女神ルーチェは知恵と共に、ささやかな恩寵を与えた。それは精霊の樹から生まれる小さな妖精。女神ルーチェの願いに応え、精霊の子らは妖精となり、人の子らと共に在ってその望みに応えた。


 妖精は不埒な者のそばには決して寄り付かない。そのような者たちは、いまだ南に残る渇いた大地へと追いやられていった。


 かくして、この世界セレスティンは緑豊かな大地に、穏やかな人々の住まう、やさしい世界として完成した。女神ルーチェはいまでもそのかたわらに銀の毛並みの美しい白き狼を従え、妖精を介し、私たち人の子らを慈しんでくださっている。



 女神ルーチェの名の下に、人の子らよ、妖精と共にあれ。さすれば、この世界は緑萌ゆる、美しい世界であり続けるであろう。

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女神ルーチェと御使様 白河胡桃 @Shirakawa_Kurumi

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