第16話 “天職”を確信した1か月の旅

「三王都踏破──“天職”を確信した1か月の旅」----------------------

俺は

・獣人族王国の王都ケイロン

・エルフ族王国の王都アイオン

・人族王国の王都アース

を中心に巡り、情報を集めた。


ときには観光客に扮し街で聞き込み調査

ときには闇夜に紛れて王城の機密文書の閲覧

ときには魔族に変装し魔王軍へ潜入


そして、もちろん

・洗濯干し場から“借りた”服

・台所から“わけて”もらったおにぎりっぽい食べ物

・宿屋から“借りた”地図、ペン、紙

・武器屋で“借りた”ナイフ

には3倍返しの品をそっと置いてきた。


本当に充実した、忙しい、俺にとっては楽しい旅だった。

これは俺にとって天職だなと思う。


しっかり準備して走り出したら、あとは走りながら考える。

止まることはしない。


昨日の俺よりも今日の俺、今日の俺よりも明日の俺が成長しているように。

命は大事だから、いくつものリスクヘッジを用意して。


まず、思いついたことを書き出し、そのさらに一歩上をいくアイデアを考える。

出し惜しみしないことが、絞り切ることが、最速成長への道である。


不思議なことに絞り切った後に、最高のアイデアが生まれることが多い。



俺はゲートのある古墳のようなものの前で、これまでに書き溜めたメモを燃やしながら思い出に浸っている。

部屋の片づけをしていたら昔の写真がでてきて、その思い出にひたってしまうような感覚だ。

たったの1か月ではあったが、壮大な旅だった。

こんなに一日一日を大切に過ごした1か月はこれまでなかった。


満足だ。

ニヤッと口角が自然と上がってしまう。


・・・・・・・・・・


俺はゲートの前に武器防具などを買いそろえるのに充分な金貨を置いた。

魔王討伐チームから派遣されるであろう誰かのために。


そして、ゲートに飛び込んだ。



「14時間の帰還──異世界30日とサエコの新たな“シゴキ計画”」----------------------

ゲートを抜けると美魔女サエコが待っていた。

美魔女サエコ:「よく戻った。14時間ぶりだな」

俺:「えっ、この世界では14時間ですか・・・異世界では30日ジャストでした」

  異世界の1か月は、現世界の14時間ということか。

ミッションいくらでもこなせそうだなと、ぼんやりと思った。

美魔女サエコ:「まあ、異世界によって時間の流れは違うから、今回の異世界は14時間ってこと」

といって、美魔女サエコは微笑んだ。

その微笑にちょっとドキッとしてしまった・・・


俺は超詳細の報告書を書いている。

魔王は討伐されたら異世界時間で100年後に復活ということは、もし、今年2003年に討伐されたならば、2年後の2005年にまたあの異世界へのゲートが開くということか。

異世界では100年経っているのだから、また違った地図になっているかもしれない。


さて、次のミッションはどんな異世界だろうかと考えていたら、

美魔女サエコから“八王寺シュウ専用訓練計画”と書かれた分厚い書類を渡された。

望むところだ、やってやろうじゃないか。


いまはちょうど時間もたっぷりある。

海外出張といった手前、今日の今日で家に帰るわけにもいかない。

会社で一週間は寝泊りし、“訓練”もとい“アップ・グレードしたシゴキ”を楽しもうじゃないか。

ニヤッ



「村の美少女精霊──100年後に再会を願うまなざし」----------------------

<ルナ村の美少女視点>

小さな声で(ごめんね)といいながら、

勝手に、

洗濯干し場から服をとり、

台所からライスボールをとった

申し訳なさそうな顔をした超美男子のお兄さんを私は目撃した。


他の人たちは、超美男子お兄さんのことを認識できていないようだ。


私は、その超美男子お兄さんを追いかけたが、あまりの速さにあっという間においていかれた。

ああ、もっと近くでじっくりとそのご尊顔を拝したい///


洗濯物が風もないのに飛ばされていったという不思議がこの村に残された。


・・・・・・・・・・


それから1か月後、私は再び、超美男子お兄さんを目撃した。


小さな声で(ありがとう)といいながら、私の家の前に

・高価な服

・たくさんの米/野菜/果物/肉/魚介

・冷蔵魔道具と魔石

を置いている。


私は、超美男子お兄さんのご尊顔をしっかりと記憶するために凝視している///

超美男子お兄さんはそんな私に気付いていないようだ。


でも、それも致し方ないことだと私は思う。


だって、私はルナ村を守る精霊なのだから。

物理的な実体をいまは持っていない、魂だけの存在なのである。


村長の家に住み着き、この村に魔物を寄せつけない結界をはり続けるのが私の使命だ。

ルナ村が奇跡の村のひとつに数えられるのは、私の結界があるからなのである。

私の結界の副次効果として、育つ農作物がとてもおいしいということも起きる。


100年毎に復活する魔王を討伐する勇者が誕生する候補地の一つがこのルナ村。

だから、私はこの世界の神からルナ村の守りをまかされている。


私は何となく100年後に再び、この超美男子お兄さんに出会える気がした。

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