第23話 全国総合実戦格闘術大会の会場が仙台なんだってちょっと遠いね

 夏休み、僕は空港に来ていた。

 それはなぜか。全国総合実戦格闘術大会の応援に行くためです。


「な、なんかすごいところで、落ち着かないね」


 なんか高級そうなラウンジに案内されてそわそわする。一緒に来ている京と萌生は落ち着いている。


「おーほっほっほっほ、どうぞ楽にしてくださいですわ。金守家専用のラウンジですのよ。他の誰も来ませんから緊張する必要もありませんわ」


 あ、その笑い声久しぶりに聞いた気がする。もしかしてチロルちゃん、使うの忘れてた?


「僕、飛行機初めて乗るし、緊張するー」


「飛行機もプライベートジェットですのよ。他の女性に囲まれる心配はないと思ってくださいな。フライトの準備ができたら専用通路で搭乗できますわ。それまで好きなものをお食べくださいですわ」


 ビュッフェみたいに料理が並んでる。焼き牡蠣、ニンニクのホイル焼き、ウナギ、オークのローストビーフ、山芋、ナッツ、スイカなど、これ全部食べていいのかな?

 飲み物はスッポンの血とトマトのミックスジュース?なにこれ、飲めるのかな?


 色々食べで飲んだけどどれも美味しかった。お腹いっぱい食べて眠くなりそう。仙台まで飛行機でどれぐらいなんだろう?でも、せっかくの初めて乗る飛行機だから寝るのももったいないな。でも起きてても本読むぐらいしかやること無いかな。


「フライトの準備ができたみたいですわ。法経さん、そろそろ行きましょう」


 くだらないことで悩んでいたら、準備ができたみたい。

 飛行機のなかで何するかは、乗ってから決めればいっか。


 と思ってたんだけど…

 飛行機の席が思っていたよりも快適すぎて、離陸前に寝てしまった。初フライトは何も記憶に残らなかった。


 ◇


 宿泊するホテルもチロルちゃんが用意してくれた。

 ワンフロアが一室になっていて、エレベーターすら鍵を使わないとその階にたどり着けないVIPルームだった。

 その部屋になぜかチロルちゃんと僕の二人で泊まることになった。

 上下のフロアも貸し切って京と萌生が使用しているらしい。


 なんかスケールが違い過ぎで、緊張しなくなった。


「修学旅行みたいで楽しいね!」


「え、ええ。そ、そうですわね」


 なんでチロルちゃんが緊張してるの?チロルちゃんが用意してくれた部屋でしょ?


「見て見て!お風呂もすごい広いよ!二人で入っても全然余裕だね!」


「ふ、ふたっ!?」


「すごい大きいベッド!二人で寝ても絶対落ちないよ!」


「ね、寝る!?」


「あっ!この部屋、プロジェクターあるよ!スクリーンで映画見れるみたい!飛行機の中で寝ちゃったから、眠くないんだよね!」


「あ、朝までするんですの!?」


「チロルちゃんこっち来て、一緒に見ようよ。ベットの上から観れるみたいだよ」


「わ、わたくし!先にお風呂入ってきますわ〜!」


 あっ、行っちゃった。うーん、一人で映画見てもつまらないかな?

 そんなときのために…白魔法の本持ってきてるんだよね。本当は飛行機で暇だったときのためなんだけど、チロルちゃんが上がるまで見てよう。


 ……


「お、お先ありがとうございますわ。ほ、法経さんも、ど、どうぞですわ」


 お風呂上がりのチロルちゃんだ。

 いつもはお嬢様雰囲気で近寄りがたいオーラが出てるけど、今は無防備な感じがする。お泊りの時のように髪を下ろしてるからかな。


「はーい、僕もお風呂行ってくるね」


 ◇


 ど、どうしてこうなったんですの!?

 わたくしのお母様が仕組んだものだと思いますが、ほ、法経さんと同じ部屋で寝泊まりするなんて………一度ありましたわ。ですが、あの時わたくしは寝てないからノーカンですわ!


 空港のラウンジで、なぜか精のつくものばかり置いてあって気になっていましたが…まさかこのために?

 法経さんも法経さんで、思わせぶりなことばかり言って!………今日本当にするんでしょうか?


 勝負下着は履いてきました。一番可愛いお気に入りのものです。きっと法経さんはセクシーより可愛いのほうが好きだと思いますわ。

 歯磨きもして体も洗ってきましたわ。昨日はエステにも行って体調もバッチリですわ。


 ………はっ!わ、わたくし、期待しすぎですわ!?いつの間にか準備万端でしたですわ!?


 ガチャ。


 !?


 お風呂場のドアの開く音が聞こえました。そろそろ法経さんが戻ってきます。


 ………ふぅ。


 わたくしは伝統ある金守家の長女、チロルですわ。こうなったら正々堂々ぶつかってやりますわ。

 もしそれで拒否されたら………いいえ、そんな時のこと考えないでいいですわ。その時はその時ですの。未来の自分に託しますわ。


「チロルちゃん、ただいま〜」


 屈託のない笑顔、初めて会った男性があなたで本当に良かったですわ。


「法経さん!わたくし、あなたのこと好ましく思っていますわ!男性としても、人としても!………わたくしを抱いてくださいませ!」


 …言いましたわ。言ってしまいましたわ。法経さんの返事がどうあれ、もう後戻りはできませんわ。


 法経さんの顔を見ます。驚いた顔をしています。その顔がやがて。照れたような笑顔に変わりました。


 か、可愛いですわ。


「ありがとう!僕もチロルちゃんのこと好きだよ。」


 その言葉を聞いた瞬間、我慢できなくなってしまいました。

 法経さんに抱きついて、ベッドに押し倒します。

 お互いがお風呂上がりの格好、素肌が触れ合います。


 いつもとは違う感覚。幸せが体に溢れていきます。

 法経さんはわたくしが幸せにしてみせますわ!


 ……


 ……


 ……


 ………ちゅんちゅん。


「ぁ―――も―――ぁ―――イッ―――」


 本当に………朝まで………

 わたくし………もう………無理………


 ぁ………またイッ………もう………許して………

 ………死んで………しまいますわ………


 ◇


 気がついたら朝になっていた。

 チロルちゃんは朝になったら寝てしまった。ごはん食べないのかな?


 昨日チロルちゃんに好きって言われちゃった。嬉しいなぁ。

 京と萌生は態度からなんとなく伝わるけど、使用人って立場から言葉にはしてくれないし。


 ふふっ。


 チロルちゃんの寝顔を見て笑みがこぼれる。ちょっと疲れ果てた寝顔なのが気になるけど、僕の体調は今までにないぐらい好調だ。


 全国総合実戦格闘術大会の時にもみじ先輩にヒール掛けてあげようかな。僕が一瞬でどんなケガでも治してあげるよ。

 今ならどんな傷でも治せる気がする。







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