[妄想考察小説]ドラクエ5 ~英雄に選ばれなかった幼馴染の少女~

アラフィフ妄想考察おじさん

第1話 選ばれなかった幼馴染

二人の女性が、その答えを聞くために立っていた。

一人は、幼い頃に共に冒険した少女。

ビアンカ。


もう一人は、天空の盾を守るルドマン家のお嬢様。

フローラ。


どちらを選び、結婚するのか。

その答えは、簡単に出せるものではなかった。


ビアンカとの思い出は本物だった。

子どもの頃、二人で危険な場所へ向かった。

暗い古城の中で、互いを信じて進んだ。

あの日々は、決して嘘ではない。


しかし、男には使命があった。

父の仇を討つこと。

母を救うこと。

そして天空の勇者を探し出し、世界を救うこと。


その旅に必要なもの。

天空の盾。

それを家宝として守るルドマン家の令嬢、フローラ。


男は悩んだ末に、フローラを選んだ。

それはビアンカとの思い出を否定することではなかった。

この世界のため、仕方のない決断だった。


フローラも、それを理解していた。

「あなたにとって、ビアンカさんは大切な方なのですね」

そう言われた時、男は驚いた。


「……怒らないのか?」

フローラは微笑んだ。

「大切な思い出を、私が消すことなどできませんから。」

フローラは強い女性だった。



時は少しだけさかのぼる。

天空の盾を求めた旅の途中。

ある小さな村で男はビアンカと偶然再会した。


二人は昔の話をした。

お化けが住むなんて言われていた古城での冒険。

別れてから十数年経っていた。


そして、心の奥に残っていた想い。

「わたし、あの時から、ずっと好きだったんだよ。」


ビアンカの言葉に、自分もまた、彼女を忘れてはいなかったことに気づく。

その夜、二人は互いの想いを確かめた。

そして夜が明ける。


照れくさそうにしているビアンカ。

だが現実は2人をゆるさなかった。


男には大事な旅がある。

ビアンカも分かっていた。


「勢いであんなことになっちゃったけど。」

「付き合ってほしいとか、結婚してほしいとか、そういうのないから。」

いつもの強気な態度でつき話すように言う。


「さぁ、冒険の続きに行きなさい。こんなところで油を売ってちゃだめでしょう。」

最後の別れではなかった。

でも見送ったビアンカの目には光るものがあった。



二人の運命はそこで終わることはなかった。

フローラとの結婚のためにと訪れた村。

そこはビアンカの住む村だった。


2人は顔を見合わせ笑っている。

「まさかこんなに早く……、そんなにわたしに会いたかったの?」


男が事情を話すと、ビアンカもリングの探索に同行するという。

昔の冒険を懐かしむように、二人は話ながら目的のものを探した。

ビアンカとの冒険はやはり楽しい、男の心はざわついていた。


天空の盾のためにフローラと結婚する?

それは正しいことなのか?

一夜のあやまちとは言え、2人ですごした夜もあった。



そんな葛藤がたしかにあった。

ビアンカと結婚すると、天空の盾が手に入る保証なんてなかった。

ビアンカは選ばれることはなかった。


フローラとの結婚式が無事に終わり、男は旅立っていった。

もちろんフローラもいっしょだった。

健気に後ろをついてく姿がなんともほほえましい。


「わたしなんかを選ばなくて本当によかった…」

そう思って、村に戻ったビアンカ。

今までと同じ生活をしていくはずだった。


フローラとのあいだに子供を授かったことも聞いていた。

もうすぐ産まれてくるらしい。

「2人の子だ、きっとかわいい子だろう。」


それなのにビアンカはうつむいた日々を過ごしていた。

ビアンカは気づいていた。

自分の中に、新しい命があることに。


ビアンカは迷った。

伝えるべきか。

それとも、自分だけで育てるべきか。


男の子が無事に生まれ、ビアンカの体力もすっかり回復した。

「会いに行こう。隠すことなんてできない。あの人との子なんだから。」

「でもフローラさんにはなんて言ったらいいか…」


ビアンカは答えも見つからないままグランバニアを訪れた。

幸いフローラはまだ出産からの疲労で、療養しているらしい。


男はビアンカが幼い子供を連れいていることに驚いた。

「ビアンカ、その子は?……もっ、もしかして!」


男はその小さな命を見た。

ビアンカと同じ金色の髪をした男の子。

「あの時、わたしも授かってたみたいで…。」


主人公は驚きつつも、城内へと迎え入れる。

客室に通されたビアンカは落ち着かない様子だったが、男が入ってきたことで安心した顔を見せた。


男は天空の盾を手に持って戻ってきた。

「もし、この子もまた勇者の血を受け継いでいるなら。」


答えはすぐに出た。

盾は、その子を認めた。

「この子も、天空の勇者だというのか…」


ビアンカはなんのことか理解できないでいた。

だが男の複雑な感情を含んだ顔を見て理解した。

「この子は、産まれてきてはいけない子だったのかもしれない。」


ただこの子のことを知っておいてほしかっただけだった。

この子への愛情が憎しみに変わるわけではない。

愛しいからこそ、後悔が募った。

自分の軽率な行動で大きな運命を背負わせてしまったのではないかと。


一方で男は違う思いがめぐっていた。

ビアンカとの子供、嬉しかった、同時に苦しかった。

自分には、フローラとの家族がある。

世界を救うという使命もある。


「この子のそばに、いつもいられる父親にはなれない。」

「それでも大切な自分の子であることにはちがいない。」


男はビアンカにあるものを出産の祝いとして贈った。

光の盾。

「ビアンカ、これを持っていてくれ」

「そばにいられない時も、この盾がお前たちを守ってくれる。」


それは伝説の盾ではなかった。

父親の願いそのものだった。

「どんな災いからも、この子を守ってほしい」

その想いが込められた盾だった。


フローラと家族。

世界を救う使命。

そして、もう一つの家族。

すべてを背負って男はふたたび旅に出ることになる。


世界は最後まで知ることはなかった。

天空の勇者は、一人ではなかったことを。

歴史に残った勇者の裏側に、もう一人の勇者の物語が存在していたことを。

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