母を失った少年が、九年後に巨大クジラへ挑む──その直線的な復讐心が、物語の核として力強く脈打つ。
だが、古いモリをまとった「ビッグサンダー」との遭遇は、ただの因縁を越え、ハヤトを一八四九年の海へと放り込む。
捕鯨が産業として息づく時代に迷い込んだ彼は、母の死の真相だけでなく、人と海獣の関係、命を奪う行為の重さと向き合うことになる。
謎の老人・島浦次郎の存在も、復讐劇に不穏な影を落とし、物語は単なる“クジラへの怒り”では収まらない広がりを見せる。
過去と現在、怒りと赦しが交錯する海で、ハヤトが最後に吠える相手は誰なのか──その問いが読者を強く引き寄せる。
小笠原の父島に暮らす中学生のハヤトは、漁師の母を海難事故で失い、突然ひとりで生きていかなければならなくなります。
事故の原因は、「ビッグサンダー」と呼ばれる巨大なマッコウクジラ。
ハヤトはクジラへの憎しみを抱きますが、そこへ母に命を救われたという謎の老人シマウラが現れて――。
本作の魅力は、母を奪った巨大クジラへの憎しみから始まりながら、果たして本当にクジラだけが悪いのか、人間側にも何か事情があるのではないかと考えさせられるところだと感じました。
「84歳のじじいVS巨大クジラ」という豪快な展開と、母を失ったハヤトの葛藤が組み合わさっているところも面白く、海洋冒険だけでなく、クジラの謎や人間と自然の関係など、いくつもの要素を楽しむことができます。
まだ序盤を拝読したうえでの感想になりますが、今後ハヤトがビッグサンダーとどのように関わっていくのか気になります。
海とクジラをめぐる謎が好奇心を刺激する、深みのある物語です。