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  • 「……嘘だ」

     視界が揺れた。
    夏の暑さによる陽炎じゃない。
    世界そのものが、一度だけ呼吸を忘れたみたいに歪んだ。

     蝉の声が止まる。
     風流れが逆向きになる。
     線香の煙は、元に戻るように墓石へ吸い込まれていく。

     曖昧になっていく世界に、やけにはっきりとした声が広がった。

    「ヒロ……、今年も会いに来たよ」

     目の前に、美鈴が立っていた。
    白いワンピースが、夏の光を透かして揺れている。
    生きていた頃と同じ笑顔。
    いや、やはり寂しげな笑顔だ……。

    「美鈴……?」

     多少の恐怖を感じながら、自分の足元が、ふと気になった。
     影が、あったはずの影が、墓石の方へ伸びている。
     俺の影ではなく、墓石の、……影?。

     胸が冷たくなる。
     墓石の名前を、改めてよく見る。


      広瀬大和(ひろせひろ)


    ……俺の名前だ。

    「……なんで、俺の名前が……」

     声が震える。
    美鈴は、少し困ったように笑った。

    「ヒロ。気づいてなかったんだね。
     私、ずっと……あなたのお墓に来てたんだよ」

     世界が、音を立てて反転した。
    蝉の声だけが一斉に湧きたち、空の色が青を忘れる。
    地面が沈み、墓石が浮き上がる。
    線香の煙は、俺の胸に吸い込まれ、心臓の鼓動は、……遠くなった。

     死んだのは、美鈴じゃない。

     俺だ。

     そうだ。思い出した。
    あの日、飛び降りたのは美鈴じゃなく、俺だった。
    美鈴は泣きながら俺の手を掴んでいた。
    でも、俺は振り切った。

     美鈴がそっと手を伸ばす。
     指先が俺の頬、墓石に触れた瞬間、
     俺の輪郭は、薄れゆく思い出みたいにほどけていった。

    「ヒロ。ありがとう。
     やっと……気づいてくれたね」

     涙が落ちる。

     俺のじゃない。

     美鈴の涙が、俺をすり抜けて地面に落ちる。

     その音は、やけに優しかった。



    ――
     お邪魔しました。「リレー小説」とは、こういうことでよろしいのでしょうか?
    何か重大な失礼があったら削除してください^^;。

    作者からの返信

    まさかの反転構造!!!

    失礼なんて何もないし、すごく引き込まれて丁寧な文章だったのだ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

    初参戦ありがとうなのだー!!!

  • なぜでしょう。

    唐突に海の家の情景をぶっこんで焼きそばの香りで埋めたくなりましたわ。

    リア充に隔意はございませんのよ。ええ、ございませんとも。

    作者からの返信

    こんな青春を送りたいだけの人生だったのだ٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
    ぶち壊したくなるよね、なのだᕦ(ò_óˇ)ᕤ