「妻だけを忘れた夫」という不可解な依頼から、記憶を意図的に切り離す何者かの存在へ迫っていく展開に引き込まれます。穏やかな日常から徐々に不穏さが増していく構成も印象的です。朔と灯里の気心の知れた関係性には温かさがあり、それだけに「大切な人の記憶を失う」という事件の恐ろしさが際立つ心理ミステリーです。