夏休みに仕方なく始めた、寂れた食事処「熊猫亭」でのアルバイト。
仕事も少なく、スマホを眺めて過ごしていた主人公の日常は、店先に捨てられていた一匹の猫・コムギとの出会いによって変わっていきます。
人懐っこいのに、相手が猫を苦手としていれば近づかない。
誰かの忘れ物に気づき、疲れている人へ静かに寄り添う。
コムギの不思議な優しさは、決して言葉にはならないからこそ、そばにいる人々の心へ深く届いていきました。
そして、いつも遠慮がちだったコムギが残したものを前に、主人公は「もう死なせない」と自ら命を守る覚悟を決めます。
夏休みの初めには、何となく毎日を過ごしていた少女が、小さな命に必要とされ、眠る間も惜しんで世話をする姿に胸を打たれました。
美味しいとは言い切れないのに、食べた人をなぜか元気にする熊猫亭も、コムギとよく似ています。
派手ではなくても、誰かの心をそっと支え、生きる力を渡してくれる。
一匹の猫が教えてくれた命の重さと優しさが、新しい命と未来へ受け継がれていく、切なくも温かな物語です。