第13話 ブレインダイブ

大智は早坂に連れられ、特別神格研究班が所有する施設を訪れていた。


見たこともない機器や装置が、廊下を歩くたびに目に入る。


やがて、二人は一室の前で足を止めた。



ガチャ――



「桃ちゃん、準備できてる?」



「は、はい!いつでも大丈夫です!」



早坂は頷くと、大智と共に室内へ入った。



「よ、よろしくお願いします……」



「こちらこそ!そういえば、自己紹介がまだだったね」



女性は大智へ向き直り柔らかな笑みを浮かべる。



「私は特別神格研究班の金山桃。よろしくね」



「はい、よろしくお願いします」



大智は頭を下げる。


そして、金山の隣に据えられた巨大な機械へ視線を向けた。


無数のコードが伸び、中央には大型のモニターが設置されている。



「金山さん、この機械は?」



「ああ〜……その質問に答えるには、まず私の異能について説明しないとだね」



⸻


金山桃。


Cランク神格鑑定士。


彼女の異能は――『ブレインダイブ』


対象者へ直接触れることで、その者の記憶を読み取ることができる。


⸻



「記憶を読み取る……」



大智の表情が強張る。



「うん。でもね、その記憶を見ることができるのは私だけなの。そこで――」



金山は隣の機械を軽く叩いた。



「これを使って、私が見た記憶を映像データへ変換するってわけ!」



「な、なるほど……?」



「特別神格技術班にお願いして、専用に作ってもらったんだよ?」



「そ、そうですか……」



大智は不安そうに機械と金山を交互に見る。


金山はそんな大智の表情を見つめると、少しだけ声の調子を落とした。



「……怖いよね?」



「……はい」



素直に答える。



「辛かったらすぐに中断するから」



金山は優しく微笑んだ。



「我慢しなくていいからね?」



「……はい」



⸻


金山が早坂へ視線を送る。



「……始めてもいいですか?」



「うん。でも、その前に……」



早坂は金山を手招きした。


金山は席を立つと、入口付近に立つ早坂のもとへ向かう。


そして、早坂は耳元で何かを囁いた。



「えっ!?」



金山が思わず声を上げる。



「ダ、ダメですよ!これ、データにも残るんですからね!」



「大丈夫だって。それに……」



早坂の声がさらに小さくなる。



「もし宮野くんが"そう"なら――」



一瞬、表情から笑みが消えた。



「組織内でも大きな問題になる」



「それは、そうですけど……」



金山は困ったように眉を寄せる。



「……?」



大智は不思議そうに二人を眺めていた。


早坂が金山の肩を軽く叩く。



「じゃ、頼んだよ?」



そう言い残し、早坂は部屋を出ていった。



「……」



金山は何も言わず、大智のもとへ戻ってくる。



「何を話していたんですか?」



「……なんでもないよ」



わずかに視線を逸らす。


大智が問い返すより先に、金山は両手を合わせた。



「さあ、始めよっか。心の準備はいい?」



「……はい!」



金山は頷くと、大智の頬へゆっくりと両手を近づけ、目を閉じた。


次の瞬間。



むぎゅっ!



「むぐっ……!?」



両側から思い切り頬を押し潰された。



「金山ひゃん!?」



「静かにして、集中してるから……!」



「えぇ……」



大智はされるがままだった。


⸻


しばらくして。


金山の表情が変わった。



「見つけた。これだ……」



眉間へ皺が寄る。



「……宮野くん」



「はひ……?」



「相当、辛い記憶なんだね」



金山の声から、先ほどまでの明るさが消える。



「暗い……。奥がほとんど見えない……」



「……」



大智は何も答えられなかった。



「もう少し深く潜らないと……えいっ!」



突然、大智の頭が引き寄せられた。



「うわっ!?」



顔が金山の胸元へ押し付けられる。



「ちょ、金山ひゃん……!?」



「深い記憶を見るには、強く接触しないとダメなの!」



「ほれ先に言ってくあはい……!」



「動かないで!」



「む、無理でふって……!」



大智の顔が真っ赤になる。


しかし、次の瞬間。


世界から音が消えた。



**********************


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『クロノス・アーカイブ』

第二章 第14話 禁忌に触れた日

↓

https://kakuyomu.jp/works/2912051605590603344/episodes/2912051605857236680


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