一番近くに
Doma
第一章 水槽を泳ぐ魚
第1話「水槽」
僕は息をしている。いくつもいくつも、あったはずののびのびとした呼吸はどこかに消えて今は。泡を浮かべるように、パクパクパクパクと、無意味な呼吸を繰り返している。
教室も、この窓の先も、人の集うところはどこか
そこに、通りかかった人からの声がした。
「何、じっとそんなの見て」
「生き物に向かってそんなのとは何だ」
僕の見ていた金魚鉢は、一番恐ろしい水槽だったのかもしれない。何もなく。ただ一匹、何の意味も、楽しみもなく、ひたすら鉢の中を泳ぐだけで死んでいくことが決まっている金魚が行ったり来たり泳いでいる。
「もっと水草や岩でも入れてあげれば楽しいだろうに」
「入れたら?」
「だめだろ勝手に」
「入れたいの、入れたくないの?」
「やめろよ、そういうの。分かってる。望むならどんな障害があってもそれをすべきだって言うんだろ? 余計なことを考えたくないのは知ってるよ。ミフネ、君は強い人だから。でも実際それは怒られる」
「分かった分かった。別に入れなくていいよ。そうじゃなくて、それ、本当に入れる方がいいと思ってるの?」
「本当にって...そりゃ、こんな何もないところで一生を終えるなんて。一匹しかいないんだし」
「草を植えても、岩を置いても、ここから出られないことには変わらないのに?」
「そりゃそうだけど」
「馬鹿みたい」
「...何を言いたいのかは分かるよ。でもそうやって現実を馬鹿にしていたらやがてしっぺ返しがくるはずだ」
「現実? その金魚からしたら水槽の中がってことでしょ。私たちからしたら、この教室から、ドアの向こうのどこへだって行ける。これが私たちの現実。あなたの言う現実って何? あなたはその金魚と同じだって言いたいの?」
「それは、違うかもしれないけど。何だよ。君はじゃあ水槽を出たものだと思ってるのか」
「逃れられたら、どうなんだろうね。...でも、見て、間抜けな眼。まんまるで、何も考えてなさそうな眼。エラがあるのに、息するためなのかな、パクパク口を開いて閉じて、落ちてくる餌を待つだけで生きてられる」
「…」
「こんな眼は人間の眼じゃないでしょう?」
強すぎて、ため息がでるような言葉だった。人から聞くとなおさらだ。強すぎるというのは、つまりこの身があまりに弱すぎるということだ。というのに。
「何か
「抜け出すだけなら簡単だよ。冒険すればいい」
「冒険?」
「分かんないなら教えてあげるよ」
そう言って彼女はくちなし色に雲を
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