人に愛される力、人からの愛情に耐える力というのは、幼少期にどれだけ親に愛されるかで決まるのかもしれない。
本作を読みながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
本作のヒロインである遥は無償の愛を信じない。いや、信じることが出来ないと言った方が正しい。
彼女が無償の愛を信じることが出来なくなった原因は、彼女の幼少期にある。
彼女が受け取る愛はいつだって条件付きだった。親は彼女の人格ではなく学業の成績の良し悪しで彼女の価値を測った。
その結果、遥は無償の愛を信じることができなくなってしまった。
そんな遥の側に本作のもう一人のヒロイン灯はずっと側に居続ける。
見返りを求めることなく、側に居続ける。
そんな灯の行動に遥は戸惑う。
生まれて始めて無償の愛を与えてくれた人が現れた時、遥はその愛を受けとる土台のようなものが育っていなかったのだ。
だから遥は研究室のベッドで灯に抱きしめられた時も、どうしたらいいか分からずに困惑してしまうし、常に灯がいなくなることを心のどこかで恐れている。
二人は結ばれているにも関わらず心の内側の孤独が遥を苛める。
そんな遥に、それでも灯は寄り添い続けた。
見返りを求めず、静かに遥の側に添い遂げた。
遥の心の内側の孤独は消えない。
それでも灯は遥の孤独に寄り添い続けた。
何故そこまで灯がするのか、遥にはわからない。
灯本人にもわからない。
わからなくてもいいのかもしれない。
彼女達の関係を恋や愛という言葉で定義するのは野暮なのかもしれない。
今はただ遥を静かに支え続けた灯と、灯の無償の愛を恐れながらも手を伸ばした遥の物語を、その物語の余韻を、静かに噛み締めていたいと思う。