第10話「どうも俺たちを待っていたみたいだが、何か用でもあるのか?」
「あれって昨日の――」
香澄がか細い声でつぶやくと、俺の方へと身体を寄せてきた。
その手は俺の腰に回され、キュッとシャツを握ってくる。
その行動から見えるのは不安だ。
「ああ。昨日、香澄に絡んでいた不良チャラ男先輩3人組だな。香澄は俺の後ろに隠れていてくれ。俺が全て対処するからさ。何の心配もいらないよ」
俺は香澄を安心させるように優しく言うと、
「う、うん」
上目づかいでこくんと可愛くうなずいた香澄を背中に隠すようにして前に出た。
3人組のリーダー格に話しかける。
「どうも俺たちを待っていたみたいだが、何か用でもあるのか?」
挑発するでもなく威嚇するでもなく、フラットに問いかける。
今のところ敵意は感じない。
リベンジ、いわゆる「お礼参り」に来たわけではなさそうだ。
よかった。
別にもう一度だろうがもう百度だろうが寝込みを襲われようが、叩きのめすのは造作もない。
が、こんな目立つところで揉め事を起こされるのだけは勘弁してほしい。
悪目立ちでもして生活指導の先生にでも目をつけられたら、俺の勇者パワーでお気楽スローライフ高校生活は台無しだ。
どうすれば目立たずにこの場を切り抜けられるかを考えていた俺の前で、チャラ男3人組は3人で一度顔を見合わせると、勢いよく頭を下げた。
「昨日はすんませんでした!」
声を合わせた大声が昇降口に鳴り響いた。
腰の角度は直角。
深々としたお辞儀という日本語がまさに当てはまる。
「なにあれ?」
「不良?」
「この学校にもいるんだ」
「やだー、こわーい!」
周囲の生徒たちからそんな会話が聞こえてくる。
やれやれまったく、目立つ行為はして欲しくないんだがなぁ。
しかし悲しいかな、今の俺たちは目立ちまくってた。
「別にそういうのはいらないんで、顔をあげてくれ」
「本当にすんませんでした!」
しかし不良チャラ男3人組は頭を下げたままで、もう一度でかい声で謝罪の言葉を繰り返した。
どうやらこいつらは昨日コテンパンにされたことで、俺を格上だと認識しているようだ。
だったら話は簡単だ。
命令すればいい。
「迷惑だから顔を上げろ。悪目立ちしてる。話したいなら、どこか目立たないところに場所を変えてくれ」
迷惑という言葉に即座に反応し、不良3人組は慌てた様子で顔を上げた。
そしてきょろきょろと周りを見渡すと、校舎の奥の辺りを指さした。
「じゃ、じゃあそこの、校舎の横のところでいいっすか?」
「わかった。香澄、少し話してくるから先に教室に行っててくれ」
俺はさりげなく香澄を離脱させようとしたのだが、
「ううん、アタシも行くし!」
香澄はまさか、自分もついていく行くと言い出した。
「コイツらと一緒は香澄も嫌だろ?」
「だってアタシ当事者だもん」
鼻息も荒く主張する香澄。
自分が巻き込まれたことだから結末を見届けたい。
いい心がけだ。
好きだぜ、そういう熱い気持ちは。
「香澄がいいなら一緒に行くか」
「うん、いいから行くし!」
というわけで、俺たち5人は昇降口から少し離れた校舎の陰へと場所を移した。
「それでいきなり謝ってきて何がしたいんだ? 反省するなら昨日のことは水に流してやるって、俺は言ったよな? 俺たちとお前らはもう何の関係もない。だから謝る必要もないと思うが?」
「そうなんだけどよぉ。でも俺ら、感動したんだ! 俺たちを強くてかっこいいあんたの舎弟にしてくれないか!」
舎弟? って子分とか手下とかそういうアレだよな?
なんだこの流れは?
さすがに想定外なんだが。
というわけで。
「断る」
俺は即答した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます