本能的に恐ろしいと思うモノがある。
この乾いた掌編には、それが嫌という程に
詰め込まれている。
何気ない日常。24時間やっているスーパーを
毎朝利用するのが日々のルーティンだった。
何の変哲もないスーパーの駐車場の奥には
どういう訳だが祠があって、よく煙草や
ライターが供えられていた。
まだ 彼ハ誰刻 の黝さを残した空。
そして店内には
火災報知器の作動試験の放送が響く。
既に不穏さが漂う中で、次から次へと
奇妙な 体験 をする。
─── 予めご了承ください。
まだ開かない衣料品売り場のマネキンの目が
フロアを歩く自分を凝っと見つめる。
白目も瞳孔もない、灰色の瞳で。
瞬間、熱風と焼け付く様な熱を感じる。
ジリジリと喧しく鳴る火災報知器、焦げた
臭いが鼻を焼く。
その後、全くの別の場所で女の子が抱いて
いたクマのぬいぐるみの目が、自分を追う。
そして ───
淡々とした文章が、恐ろしさを加速させる。
焔によって変貌させられた男が見たもの。
あの、灰色に崩れ散る視線。
タイトルにある『Pyro』には俗に放火魔の
ニュアンスもあるという。
放火魔の神 というダブルミーニングが
畏ろしさを倍増させる。
生き物は、無条件に火を恐れる。
それは根源的な 恐怖 であり、又一つの
不可逆的な 不条理 でもあるのだろう。