東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそその歌を胸に長い旅路を歩いてきた語り手。彼の征くその旅路に、「あるじ」は居ない。大異変によって、数千万の人間が暮らしていた都はそのシステムを瓦解させ、いまや意思をもたぬ存在が闊歩する。だからこそ、その中を、忘れぬ思いを胸にいだいてひたすらに歩き続ける語り手の姿が高く匂い立つ――そんな旅のものがたり。
真夏、日陰を避けながら使命を果たすべく神社に向かう一人の男。日向を歩け、生きる屍になりたくなければ。