このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(423文字)
「敵が強い」のではなく、「敵の正体すら掴めない」ことが、これほど怖いとは。黒い塊を前にしても、本体を見証せない多喜。そこへ絶え間なく響き続ける「ブーン」という羽音 ───何気ない虫の存在が、じわじわと異常な恐怖へ変わっていく描写が見事でした。そして記録によって、これは単なる怪異ではなく、実際に○○○○な事件なのだと改めて突きつけられる。静かなのに、不穏。派手に説明しないからこそ想像が膨らむ、非常に印象的な怪異譚。