第9話番外編:東京スポーツ杯2歳ステークス実況解説
『11月19日、東京競馬場。よく晴れております。
2歳の重賞、東京スポーツ杯2歳ステークス。この一戦から、来年のクラシックが見えてまいります』
『芝1800メートル、12頭立て。馬場状態は良と発表されています。
馬券のお買い忘れのないよう、お早めにお求めください』
『1番人気は連勝中のフサイチリシャール。前走の萩ステークスは重馬場を逃げ切りました』
『そして大外8枠12番、エルペレグリノ。新馬戦を勝ったばかりの1勝馬。6番人気です』
『各馬、ゲートインを始めております』
『大外のエルペレグリノ、最後です』
『さあ、全馬入りました』
『スタートしました。揃いました』
『飛び出したのは大外、エルペレグリノ。いいスタートだ』
『しかしフサイチリシャール、内から先頭へ。やはり行きます』
『エルペレグリノは内へ入りたいが入れるか』
『先行馬集団によって入れません』
『隊列が決まりました。先頭フサイチリシャール、単独で逃げます』
『2番手、3番手と続いて、4番手にエルペレグリノ』
『前に3頭を置く形で外目の4番手です』
『第2コーナーを回って向正面へ』
『先頭はフサイチリシャール。悠々と逃げています』
『おっと、ここで動いた。エルペレグリノ、向正面から上がっていく』
『新馬戦より早い仕掛けだ。まだ3コーナーまで距離があります』
『じわじわと上げていきます』
『しかし、前の2頭が並んでいる状態だ』
『第3コーナーでエルペレグリノ、内と外のあいだの狭いところへ入った』
『割った! 二頭のあいだを割って抜けてきた』
『第4コーナーで先頭フサイチリシャールにエルペレグリノは1馬身差まで迫る』
『さあ直線だ。府中の長い直線に、2頭が並んだ並んだ!』
『フサイチリシャールとエルペレグリノ。並んだままだ』
『後ろから1頭、外を伸びてくるがこれはどうだ』
『残り400を切ったが、2頭が競り合ってる』
『残り200を切った。フサイチリシャールにムチが入る!』
『エルペレグリノにもムチが入った』
『まだ並んでいる。まだ並んでいる。壮絶な競り合いだ!』
『残り100。エルペレグリノが前へ出た!』
『フサイチリシャールはもう一度、もう一度食い下がるが』
『届かない!』
『エルペレグリノ、先頭でゴールイン!』
『半馬身差の決着です。エルペレグリノが重賞初制覇です』
『2着フサイチリシャール、3着はメイショウサムソン』
『時計が出ました。1分46秒8。レコードです。コースレコードを更新しました』
『2着のフサイチリシャールも、1分46秒9。2頭ともレコードを上回っております』
『解説の阿野さん、これはどう見ますか』
『壮絶な競り合いでしたね』
『逃げたフサイチリシャールも十分脚を残していましたね』
『そうですね、逃げであれだけの脚を残していた。前走の内容から見ても、力は出し切っていると思います』
『エルペレグリノの早仕掛けについてはどうですか?』
『向正面から動いてあの時計ですからね、持続力がとてもいいです』
『3コーナーで内と外を割りましたが』
『あそこは半馬身しか空いていません。迷えば閉まります』
『鞍上の判断ですか』
『……いえ。あれは、どっちかな』
『馬か騎手のどっちかわからないと』
『そうですね、ここからでは何とも、ただ、あそこで行けるのは強いことです』
『3着のメイショウサムソンは』
『最後の伸びは良かったですが、前2頭がそれ以上でしたね』
『あらためて、勝ち馬をどう見ますか』
『初の重賞でこれは十分強いです。次走も期待できるでしょう』
『それでは、検量室前から騎手のインタビューです』
◇
「海老原騎手、重賞勝利おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「向正面からの仕掛けは、作戦どおりでしたか」
「そうですね。あそこから動くと決めていました」
「早いという声もありそうですが」
「エルペレグリノにとってはあれがベストだったんですよ」
「なるほど。3コーナーで内を割りましたがあれは?」
「あれは私じゃなくて、エルペレグリノが自分で行きましたね」
「そうなんですか?!」
「ええ。まさかエスコートが得意な私が、エルペレグリノにエスコートされましたよ」
「ふふふ、それはなんとまあ」
「私も学ばせてもらいました」
「最後は壮絶な競り合いになりましたね」
「相手が強かったですね。ただ、うちも引きませんでした」
「レコード決着になりましたがそれは」
「そこは意識してませんでしたが、速い決着だとは感じました」
「ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。
インタビューは以上です」
◇
『いい馬に、いい騎手が乗っている、という感じでしたね』
『2歳のこの時期に、あの判断ができる馬はなかなかいませんよ』
『来年が楽しみになる一戦でした』
『ありがとうございます。東京スポーツ杯2歳ステークス、以上でお伝えしました』
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