閑話 芹那に彼女が出来ない理由_2

「次はスパですか?」

「そー、食べた後はこれが最高なんだよ」


 その次に来たのは同じホテルに入っているスパ。移動はほとんどなしで、さっきのレストランから5階ほど下がった場所にある。


 スパは普通の温泉とは違って湯着着用で入るらしい、もちろん着なくてもいい。

 初めてのデートで肌を晒すのはちょっと恥ずかしいような気がするけれど、湯着があるならいいのかな。最近の若い子はどうなんだろう?

 私とかはお腹いっぱい食べすぎて、お腹がぽっこりしているのが気になるところだけど……湯着ならぎりぎりカバー出来そう。


 お高いホテルということもあって、レンタルの湯着は少しお洒落めのものが多かった。芹那さんは可愛い可愛いと目いっぱい褒めてくれるからなんか恥ずかしい。私も芹那さんとほとんど年齢変わらないはずなんだけど。


「……どうですか?」


 芹那さんが先に行ったところで、恋乃香が私の感想を求めてつんつん、とつついてくる。

 湯着と言っても恋乃香はビキニタイプのものを選んでいた。髪も上げていていつもと雰囲気は違う。芹那さんが言う通り、凄く可愛くて……。


「芹那さんがいなかったら、可愛すぎて抱きしめてるところだったかも」


 そんな感想を正直に伝える。恋乃香は結構着痩せするタイプで、胸も大きい方でスタイルが良いからどこかのモデルみたいにも見えた。


「今度は家で着てあげますね、すぐ抱きしめてもらえるように」

「家だったら着る必要なくない?」

「……みひろさんのえっち」


 付き合った時には夏は終わっていたから、そういえば恋乃香の水着とか見ていない。恋乃香のセリフになんとなく身体が火照ってしまうのを抑えながら、私達は芹那さんを追いかけた。




 スパと言ってもスペースはビルの一区画で、そんなに大きくはない。内湯2つに水風呂、サウナで全部。人もまだまばらだった。


 三人並んで身体を洗って、芹那さんのすすめでサウナに入る。むわっとした熱気に包まれながら、あー、と声を出している芹さんの隣に座った。


「芹さん、ここまでの相手の反応ってどんな感じだったんですか?」

「んーと、お風呂行こうって誘った時はちょっと悩んでたけど、湯着あるよって言ったら付いてきてくれた。こういうスパに来るのも初めてみたいで、最初は緊張してたけど、入った後はリラックスしてくれてたかなー」


 じゃあここまでは別に問題なかったのか。ますます芹那さんがあんな号泣することになった理由がわからない。


「ところで、せっかくだから私は二人のことも聞きたいなー。付き合ってからどんなことして遊んでるの? もういろいろな事は済ませた?」


 そんなことを考えていると、芹那さんはいつもの調子でそんなことを聞いてくる。


「芹さん、それセクハラですよ」

「うへへ、いいじゃない少しくらい。お姉さんに教えなさいよ、どっちがタチなの? 私のイメージでは恋乃香がネコなんだけど」

「…………」

「え、まさか逆? へぇ~みひろ意外に……」


 さっそく答えづらい質問が来たと思ったら、その沈黙で芹那さんは気づいてしまったらしい。


「う、うるさいなぁ!」

「芹那さん」


 私は恥ずかしくて今すぐにでも出たかったけど、恋乃香がちょっと真面目そうな声で芹那さんを呼ぶ。


「みひろさんはしっかりしてますけど、攻められると弱いところが可愛いんです。こないだだって仕事終わりにどうしても私がえっちしたい気分で、でもそれをみひろさんが気づいてくれて一緒のお風呂に誘ってくれたんです。最初はちょっと控えめなスキンシップでしたけど、私が積極的に攻めるとすぐにいい声を出してくれて……」

「ちょっ! 恋乃香その話ストップ!!!」

「へぇ~、いいね~。お風呂で、ね。ちょうど今みたいな……? あ、ちなみにここ水着の着用は自由だし、なんなら先私出てあげよっか?」

「サウナで何するっていうの!?」


 熱気に当てられてか恥ずかしいのか訳が分からなくなって、二人をほっといて私はサウナから飛び出した。




 なんだか辱めを受けてしまったけど、その後は二人に謝られて仕方なく許した。私別にネコだけじゃなくリバもいけるはずだし、いつか恋乃香を良い声で鳴かせてやるからな……。

 お風呂上りはちょっとした休憩所でビールを頼む。さすがホテルというべきか、良さそうなクラフトビールがあって三人でグラスを傾ける。


「あー、うま! お風呂上りはやっぱこれよね!」

「結構フルーティーな感じなんですね……私、これ結構好きです」

「クラフトビールってフルーティーなの多いよね?」


 私も嫌いではないけれど。

 ビールは軽くて飲みやすいし、体の中もサウナで乾いているからすぐにビールは無くなってしまう。あっという間に空にして二杯目を注文した。


「芹さんと一緒にきた子もビール飲んだの?」

「いや、本当は飲ませたかったんだけどあんま強い子じゃなかったみたいで、普通にオレンジジュース飲んでた」


 飲ませたかった、というところに少し引っかかりを感じた。けど結果飲まなかったならセーフか、と私も二杯目を傾ける。


「ここまでは楽しくお話していたんですよね」

「そうだよー、めっちゃ良い雰囲気でさー」


 恋乃香とアイコンタクトをするも、恋乃香はふるふると首を振るだけだった。

 そうだよねぇ、今のところ全然芹那さんの悪いところ見つからないし。楓はなんか諦めてた様子だったけど、その女の子が実はお姉さんタイプが好きじゃなかったとか? でも芹那さんが連敗しているのは事実なんだよな。

 と私と恋乃香で困惑していると、芹那さんは2杯目も空にしてこんなことを言った。


「絶対次もいけると思ったのになー」

「この次? ですか?」

「うん、ここのホテルの一室予約してたから、そこに連れ込んで朝までイイコトしようと思ってたのに……」


 その言葉に、私と恋乃香の間に沈黙が落ちる。


「え? いや、会うのはその日が初めてだったんですよね?」

「会うのはね、でもそれまでずっとメッセージは交換してたし、よく電話もしたし、それに私のこと好みだって言ってくれたし~これはもう付き合ってるようなもんでしょ?」


 本当にこの人は分かってないのか? 初めて会った人といきなりホテルで一晩過ごすなんて……しかも芹那さんよりずっと若い子なら普通に怖いと思うんだけど。


「恋乃香……」

「はい、アウトです」


 恋乃香ももちろん同意見。そこから私達は、言葉を尽くして芹那さんの貞操観念を矯正しようと頑張ったのだった。




 私達の説得が効いたのか、それから芹那さんはデートの前後は私達に相談するようになった。

 性欲は抑えてと何度も言い聞かせて、最初の数回は無難なデートを繰り返してもらう。そしてその反応を私達が評価する。


「……可愛さに今にも襲っちゃいそうなんだけど!」

「貞操帯でもつけます?」

「恋乃香、さすがにそれはやりすぎじゃ……」

「いや、芹さんならそんくらいの方がちょうどいいんじゃない?」

「楓、それだけは勘弁して!」


 芹那さんの欲はお酒でカバーしてもらって、デートである程度の信頼関係も出来たところでその彼女さんをフリティラリアに連れてきてもらった。芹那さんの隣に座る彼女は、まるで高校生みたいな可愛い女の子で、私たちは逆にその子を守らないと! と躍起になったりして。


 冬が過ぎて春が来た、とある営業日。


 芹那さんが一番に来店したと思ったら、にやにやしながら私の耳元でこんなことを囁いた。


「私の彼女、タチだったわ……年下に責められるのもなかなかいいね」


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25%な妹との関係性 シキ @kouki0siki53

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