「先生、この作品です!」
ぼくは表紙を先生に差し出しました。
『氷の皇太子は、時をかける少女に執着する』
先生は題名を眺めながら、静かに微笑まれました。
「『氷の皇太子』とは近寄りがたい人物のようだね。そして『時をかける少女』……この二つの言葉が並ぶだけで、何やら大きな運命の匂いがするじゃないか」
ぼくもまったく同じ気持ちでした。
読み始める前から、「この二人には、どんな未来が待っているんだろう」と胸がわくわくしてしまったんです。
物語は恋のお話だけではありませんでした。
過去と未来が交差し、一つの選択が誰かの運命を少しずつ変えていく。その様子がとても丁寧に描かれていて、ぼくも夢中でページをめくってしまいました。
なかでも印象に残ったのは、氷のように心を閉ざしていた皇太子が、少女と出会うことで少しずつ変わっていく姿です。
冷たい人だと思っていたのに、その心の奥には優しさや弱さが隠れていて、それが少しずつ表れてくるものですから、「頑張れ」と応援したくなってしまいました。
でも、本当に強いのは少女の方かもしれません。
誰かに守られるだけではなく、自分の力で未来を変えようと何度も立ち上がる姿は、とてもまぶしく見えました。
だからでしょうか。
二人の関係は「執着」という言葉だけでは言い表せないほど深く、お互いを思う気持ちが読んでいて胸に伝わってきたのです。
先生は本を閉じて、静かにおっしゃいました。
「小林君。もし人が運命を変えられるとしても、その先に待っている未来まで思いどおりにはできない。だからこそ、一つひとつの選択には意味があるんだよ」
ぼくはその言葉に大きくうなずきました。
美しい世界の中で描かれる切ないすれ違いと、未来に抗おうとする二人の強い想い。そんな素敵な作品でした。