幻想的、かつ独特で曖昧な世界の描写が非常に巧みで、全身が恐怖で包み込まれました。とても面白かったです。
本作の主人公は、鏡の世界に入り込んでいた。その鏡の世界は現実世界を完全に模倣していた。主人公は現実世界に戻るため、出口を探し回る。けれど、それらしきものはどこにも見当たらない。
鏡の世界はいつもの見慣れた景色で、大切な人たちも存在している。それでも主人公は現実世界に戻りたかった。景色も、人間も、みんな模倣されたものだと、主人公が認識してしまっているからだ。
そうして、冷静ではなくなった主人公は鏡の世界を探索していくのだが——といったお話です。
圧倒的な文章力に驚かされました。現実世界を模倣した鏡の世界、という幻想的なシーンを静かで美しい文体が織りなすため、非常に魅力的な小説になっています。
本作のジャンルはホラーですが、流血表現や身体欠損を伴うシーンはありません。ですが、これがまた不気味なのです。
わかりやすく読者を怖がらせようという小説はありますが、本作は違います。読者が物語を読み進めていくうちに、不気味なその世界観に飲み込まれていってしまうのです。気づいたときには、もう作者の術中にハマっていますよ。
この作品を読み終えるとき、あなたは消失を目の当たりにするでしょう。一体それが何なのか、自分の目で確かめてみてください。
おすすめの作品です。ぜひ、ぜひご一読ください!