レビューを書こうと思ったのは、静止した世界の美しさに共感を覚えたからだ。
噴水の飛沫すら空中で停止し、何もかもが眠りにつき、すべてから隔絶された世界。いばらのみが揺蕩うがごとくあり、内と外を分け隔てる。
廃墟のような空虚感と残響があり、廃墟とは違い眠っているだけで、すべてはそこにあり、終わってはいない場所。
不気味に思うだろうか。あるいは孤独に絶望し、恐怖するかもしれない。
しかし、私はそこに、無人の雪原で思わず深呼吸をしたくなるような、限りなく透明に近い静謐で透き通った空気を感じたのだ。
さて、本作は女子高生の少女の視点でもって、眠りの呪いを良きもの、永遠のモラトリアムと解釈して描かれている。
主人公は高校三年生。進学、就職、恋愛、結婚、出産。これから先の人生に対して漠然とした不安を抱き絶望している。
少し年下のいばら姫に対して自己を重ね、眠りを祝福として、永遠を夢見る。
いばらは心の壁だ。思春期特有の潔癖さでもってあらゆるものを拒絶し、接触と変化を穢れとして否定する。
今のままが、このままでいることこそが、最も美しいのだという頑なさで。
だからこそ、いばらは姫を閉じ込めるためではなく、少女のままでいられる時間を守るために生い茂る。
しかし、明けない夜はないし、止まない雨はないし、醒めない夢はない。
呪いは「100年の間眠り続ける」ことであり、最初から期限付きで、いつまでも子供でいられない。
目覚めを、『いばら姫』を原作とする『眠れる森の美女』では、よりドラマチックに未来への希望として演出している。
姫は王子と結婚し、国中から祝福される。
それで、その後は?
童話は「めでたし、めでたし」で終わる。しかし思い出してほしい。12人の魔女たちの祝福に未来はあっただろうか。
その先にある人生を私たちは知らない。
少女が恐れているのは、その「その後」なのだ。
きっといつか、想いを馳せるのだろう。
眠り続けていれば失わずに済んだ、ありえざる、ありえたかもしれない、あの日々を。
少女の慟哭とともに。
【レビューコンテスト応募】